ENo.0092　エン・レイ

【14ページ目：『アルテア』の魔王、行きます！】

　結局この出だしですが、大変な事になりました。
　レヒルさんを助けにゆくはずが、商品が売れないかもしれない戦場へ出撃になっていました。
　カフェ『アルテア』がどこまで通用するか、全くわかりません。
　だけど、私は怯みません。
　誰が何と言っても、私のお店はカフェです。美味しい飲み物と食べ物、そしてお土産でお客様をおもてなしすると、最初に決めたのですから。……あ、いえ、お土産は後から考えた苦肉の策でしたが。
　それに、私は一人ではありません。
　姉妹提携の『桟敷城』の皆さん、来てくださったお客様、不思議な出会いをしたユリアさん。
　そして、あの人がいます。
　繋いだ縁は、無駄ではないのです。
　この数ヶ月やってきた事は無駄ではないと信じて、私は私の戦い方を貫くのみです。

「――という訳で、出撃です」
「出撃って言いながら、俺達に戦わせる気なんざ、さらさら無いくせにな」
「いや。それがあなたの戦い方なのだろう？」
「所詮、私達は武器を振るう事でしか結果を得られない人間だ。そうでない道を選ぶのは、勇気のいる決断で、険しい道に違い無い」
「インシオン、あなたも誇るべきだ。あなたの相方の生き様を」
「『生き様』なあ……」
「？」
「いや、何でもねえ」
「それにしても、お前がそう言うって事は、記憶が戻ったのか？」
「ああ……まあ……、コルヴス・コラクスと話をして、大体の事は思い出した」
「私はこの戦いが終わったら、この世界を去るだろう」
「そして、ここでの記憶は、十中八九無くなるな」
「……そうですか」
「でも、私達は絶対に忘れませんよ、ユリアさんの事。一緒に働いた、大切な仲間です」
「仲間……か」
「はは、ありがとう」
「こちらこそ、本当にありがとうございました」
「さあ、御託並べるのはここまでだ。敵さんの」
「いや、『お客様』のお出ましだぜ」
「はい、行きましょう！　魔王カフェ『アルテア』、開店です！」

『資料室』と書かれたドア看板の下に、『飲食厳禁　飲食はフードコートで』とか、『資料の外部持ち出し厳禁（館内は許可）』とか、そんなことが書いてある。
ここは水族館の資料室だ。あなたはここで様々な海の生き物の生態が書かれた本や、あるいは水族館職員のつけた記録を読むことが出来る。
――そして、この水族館には存在しないはずの、『人魚』という存在について、非常によく知ることが出来るだろう。

*知識全振りユニオン*
*ユニオン購入は独断脳死予定*
*細かいことは以下のURL*

http://midnight.raindrop.jp/trieste/union.html