ENo.0092　エン・レイ

【11ページ目：大事な思い出の為に、がんばります。】

　やっと風邪が治りました。
　病気になると弱気になりますが、弱気もまた病を引き寄せますね、良くないです。
　でも、インシオンの作ってくれたお粥を食べて回復した今は、元気百倍です！　勇者さんでも魔王さんでもドゥルガーさんでも何でも来てください！　ってかんじに元気です。

　回復したところで、ひとつ大きな転換期を迎えました。
　期間限定アルバイトで雇っていた、ユリアさんを知る方が現れたのです。
　コルヴス・コラクスさん。姉妹提携している桟敷城でお世話になっている方だそうです。やはりユリアさんと同じく、私やインシオンには想像のつかない戦いがある世界から来た方だそうで、最終決戦の際に視力を失ったとか。
　でも、「見えない」というハンデを負っているとはとても思えないくらいに、所作が自然な方で、ユリアさんの事も、声を聴いただけで、ユリアさんだとわかりました。すごい方がこの世界にはいるものです。

　そんなコルヴスさんと、ユリアさんがお話しすれば、ユリアさんの失われた記憶も、蘇るかもしれません。
　その場を用意します。
　コーヒーの新作は、私がダウンしている間に、インシオンが作ったものがあります。
　食べ物は……何がいいでしょうね。

「という訳で、食べ物の相談です」
「何でもいいじゃねえかよ。今まで、サンドイッチだのパスタだの作ってきたじゃねえか」
「でも、ユリアさんの記憶が戻るかどうかの、正念場です。気合を込めた一品を作りたいと思います」
「逆に気負う必要無いんじゃねえのか？　ピザでも作ってろ」
「ピザ」
「ピザ」
「気負うなって言う割には、結構大掛かりですね」
「『れいとーこ』に『れいとーしょくひん』が入ってるだろ。それを『でんしれんじ』で焼けばすぐだ」
「……インシオン、意外と私より文明の利器に慣れていますね」
「郷に入りては郷に従え、だ。使えるものは何でも使う」
「では、それでいきます」
「オーソドックスに、マルゲリータでいいですかね」
「おう。外れはしないだろ」

『資料室』と書かれたドア看板の下に、『飲食厳禁　飲食はフードコートで』とか、『資料の外部持ち出し厳禁（館内は許可）』とか、そんなことが書いてある。
ここは水族館の資料室だ。あなたはここで様々な海の生き物の生態が書かれた本や、あるいは水族館職員のつけた記録を読むことが出来る。
――そして、この水族館には存在しないはずの、『人魚』という存在について、非常によく知ることが出来るだろう。

*知識全振りユニオン*
*ユニオン購入は独断脳死予定*
*細かいことは以下のURL*

http://midnight.raindrop.jp/trieste/union.html