ENo.0092　エン・レイ

【８ページ目：アルテア三時間クッキングを行います。】

　毎日が目まぐるしくて、毎度毎度「大変です」と書いている訳にもいかなくなってきました。
　ですが、ちょっと困った事が起きたので、今日の日報に書きます。
　先日、記憶が戻るまでの期間限定アルバイトとして雇う事になったユリアさんですが。

　お料理ができません。

　サンドイッチを作る為にパンの耳を切ってもらったら、パンをど真ん中から半分にし。
　パスタは茹ですぎて伸び伸びに。
　クッキーなら大丈夫かな、と思ったのですが、黒い何かの残骸が焼けました。

　できあがったものや、飲み物を配膳するのは、戦う人であった故か、バランス感覚が大変良く、お昼の忙しい時間帯に沢山の配膳をお願いしても、インシオン以上にそつなくこなしてくださいます。
　ただただ、お料理ができないのです。

　私は考えました。
　ユリアさんは器用な方です。きっと、正しい手順さえ守れば、きちんとしたものを作れるのではないでしょうか。
　幸い、私の頭の中にレシピは沢山あります。それを紙に書き出して、なぞってもらえれば、きっと。これは我ながら名案ですね。

「という訳で、今日はまずは三時間、特訓といきましょう」
「……………」
「どうされました？」
「いや……」
「何だか、いつかどこかで、似たような事をした気がしてな」
「お料理の特訓を、ですか？」
「ああ」
「ものすごくツンケンした相手に、『レシピ通りにやれ』とめちゃくちゃどやされながら、結局それなりのものを作れたような……」
「では、ユリアさんは、レシピ通りにやれば、必ず美味しいものが作れるはず、という事ですね」
「それなら安心ですね！　できあがったら、インシオンに試食してもらいましょう」
「おい、何でそこで俺が出てくるんだ。俺は毒見係か？」
「貴方だってお料理はほとんどしないじゃありませんか。見ているだけではなくて、協力してください」
「……わかったよ」
「では、カフェ『アルテア』のお料理教室を開始しましょう！」
「わかった、よろしく頼む」

『資料室』と書かれたドア看板の下に、『飲食厳禁　飲食はフードコートで』とか、『資料の外部持ち出し厳禁（館内は許可）』とか、そんなことが書いてある。
ここは水族館の資料室だ。あなたはここで様々な海の生き物の生態が書かれた本や、あるいは水族館職員のつけた記録を読むことが出来る。
――そして、この水族館には存在しないはずの、『人魚』という存在について、非常によく知ることが出来るだろう。

*知識全振りユニオン*
*ユニオン購入は独断脳死予定*
*細かいことは以下のURL*

http://midnight.raindrop.jp/trieste/union.html