ENo.0092　エン・レイ

【４ページ目：お土産を置く事にしました】

　先日は、だいぶ売り上げがありました。
　マーケットでアルバイトさんを雇ったおかげでしょうか。
　インシオンは、「奴はやめろ。お前の身が危ない」と、即刻解雇しようとしましたが、もう少し様子を見ましょう、と説得して、今日もお手伝いをお願いします。

　それから、コーヒーと軽食だけのお店では、どうしてもロス高が怖いので、お店経営の仕方の本を少し読んで、考えました。
　お土産を沢山置くのはどうだろう、と。
　飲食物以外なら腐りませんし、カフェで一杯を飲んだお客様が、記念に何か一品買っていってくださったら、お客様の良い思い出になりますし、お店の売り上げも増えるしで、一石二鳥です。
　あ、違いますね、どちらも得をするのは、何て言うんでしたっけ、えーっと、ウイーンウイーン？　の関係？　だったでしょうか。
　とにかく、これは良い思いつきです。その日のお客様の傾向に合わせて置く品を変えれば、更なる売り上げも狙えるかもしれません。

　……なんだかお金にがめつい女みたいになってきましたが、お店を回すには、絶対にお金が必要です。私は学びました。
　昔、カフェを開くのが夢だとある人に語ったら、
『エレみたいなお人よしでは、無一文の相手にもただで品物を提供してしまって、すぐに店が潰れるのが関の山ですよ』
　と、半笑いで一蹴された事がありますが、もう彼にもそんな事を言わせません。
　次に会えたら、ドヤ顔とやらで胸を張ろうと思います。

「今日の日記は書き終わったか」
「あ、今終わりました」
「またマーケットに行くんだろ。早く支度しろ」
「はい！」
「今週は、家具や書籍、照明に電器をお求めの方が多そうですね」
「そんなに買い込めねえだろ。予算と、俺が持って帰れる量に限界があるぞ」
「そうですね……。きちんと考えて買わないといけません」
「もっと外で売れると良いんだがな。デリバリーの注文も来ねえし、あの水族館の主には、持ち込み禁止されたし」
「あ、あれは私が常識無しだったのがいけないんです。リンジーさんは悪くありません」
「だからそんな威嚇顔しないでください。その顔で誰かを脅すのも無しですよ」
「してねえよ」
「してます」
「……ほんと、お前も言うようになったよな」
「何年貴方を見てきたと思っているんですか。貴方の思っている事は大体わかるようになりましたよ」
「んな事言ったら、俺だって、お前の事は何でもわかるからな。侮るなよ」
「……恥ずかしい事をサラッと言いますね……」
「お前が先に言ったんだろ」
「うう……もういいです！　早くマーケットに行きましょう！」

『資料室』と書かれたドア看板の下に、『飲食厳禁　飲食はフードコートで』とか、『資料の外部持ち出し厳禁（館内は許可）』とか、そんなことが書いてある。
ここは水族館の資料室だ。あなたはここで様々な海の生き物の生態が書かれた本や、あるいは水族館職員のつけた記録を読むことが出来る。
――そして、この水族館には存在しないはずの、『人魚』という存在について、非常によく知ることが出来るだろう。

*知識全振りユニオン*
*ユニオン購入は独断脳死予定*
*細かいことは以下のURL*

http://midnight.raindrop.jp/trieste/union.html