ENo.0092　エン・レイ

【12ページ目：出歯亀がよくないのはわかっていますが。】

　あまり気にかけるのもよくないとは思いますが、気になります。やっぱり気になります。
　カウンターの中にいて、この日報を書いていても、ユリアさんとコルヴスさんの会話に、ついつい耳を傾けてしまいます。
　知らない単語が色々出てきます。『霧の中を駆けるきたい』とは、何でしょう？　期待？　気体？　私にはわかりません。
　やはりお二人は、私達の知らない世界から来た方々なのですね。この魔王城のダンジョンには、色んな世界から、色んな種族の方が集まっているのは、重々わかっていたつもりですが、いざそれを肌で感じると、不思議な感覚です。

　いつか、私もできるでしょうか。彼らの元の世界へお邪魔する事が。
　その時は、あの人と一緒に、新しい世界を堪能できたらいいな、と思います。
　あ、今が楽しくない訳ではありません。カフェ『アルテア』の経営はとても新鮮で面白い経験です。遊びにきてくださるお客様とも仲良くなれましたし。

　でも、あまり慣れすぎると、いつか、この城を離れる日が来た時に、寂しくて仕方なくなってしまうかな、とも思います。
　残り数週間で、大変な事が起きるとも聞いています。
　せめて今は、この穏やかな日々が続けばいいな、と願っています。

「……お前、あの二人の事を気にかけて浮ついてるの、バレバレだぞ」
「えっ、そうですか！？」
「『いつもと味が違う』って、常連からクレーム来たぞ」
「えっ？　あっ！」
「……同じ豆で二度抽出していました……」
「ほらな」
「他人の事に気を遣ってやるのはお前の美徳だが、それでおろそかになる事があるのは、欠点だ」
「うう……返す言葉が無いです」
「なら、御託並べてないで、淹れ直しだ」
「自分でカフェ『アルテア』の評判を落としてたら、世話ねえからな」
「はい、すいません……気をつけます」

『資料室』と書かれたドア看板の下に、『飲食厳禁　飲食はフードコートで』とか、『資料の外部持ち出し厳禁（館内は許可）』とか、そんなことが書いてある。
ここは水族館の資料室だ。あなたはここで様々な海の生き物の生態が書かれた本や、あるいは水族館職員のつけた記録を読むことが出来る。
――そして、この水族館には存在しないはずの、『人魚』という存在について、非常によく知ることが出来るだろう。

*知識全振りユニオン*
*ユニオン購入は独断脳死予定*
*細かいことは以下のURL*

http://midnight.raindrop.jp/trieste/union.html