ENo.0092　エン・レイ

【３ページ目：アルバイトを雇う事にしました】

　大変です。
　利益が出ません。
　売り上げはそこそこあるのですが、仕入れをして、飲み物と食べ物に毎日ロスが出る事を計算したら、粗利は雀の涙です。
　このままでは経営の危機です。破産です。それだけは勘弁です。
　故郷でお姫様をしていた頃は、お金の事は、税政専門の方がいらしたので、そちらに任せきりでしたし、結婚した後も、インシオンがお国の軍人として働いてそれなりの稼ぎがあり、毎月のやりくりに困った事は無かったので、自分でお仕事をして、自分でお金を管理する事が、こんなにも難しいとは思いませんでした。ちょっとしょんぼりです。

　そんな折、姉妹提携をしているササゴイさんの『桟敷城』へ、劇を見に行って、衝撃を受けました。
　桟敷城は、うちのカフェのように、何かを売る訳ではなく、護衛さんを雇って、彼らに劇を手伝ってもらう形式を取っていました。
　素敵な歌と劇を楽しみながら、私の中で、「これだ」という思いが浮かびました。

　そう、うちも護衛さんをアルバイトに雇って、おもてなしサービスを提供すれば良いのです！

　カフェが小さいから、私とインシオンだけで経営できるだろう、という考えが浅はかでした。これは我ながら名案です。
　そんな訳で、今日はこの日記を書き終わったら、マーケットへ行きます。カフェ『アルテア』を守ってくれそうな、素敵な護衛さんとの出会いがあるといいな、と思います。

「おい、日記は書き終わったのか」
「あ、はい。後は出かける準備をするだけなので、もう少し待ってください！」
「店の鍵を忘れるなよ。空き巣に入られて何か持っていかれたりしたら、とんでもねえからな」
「そこは大丈夫です。私はそこまで抜けていません！」
「……その根拠のねえ自信が、昔から不安なんだよ……」
「それに、護衛なんていらねえだろうが。俺がいるんだから」
「インシオンでは接客が出来ないじゃないですか。笑顔の似合う方と契約しにいくんですよ」
「いや、そうじゃなくて、お前を守るのは俺の特権つうか……」
「？」
「……すぐそういう顔するところが、危なっかしいっつってるんだよ」
「？？？」
「まあいい、行くぞ」
「あ、待ってください！」

『資料室』と書かれたドア看板の下に、『飲食厳禁　飲食はフードコートで』とか、『資料の外部持ち出し厳禁（館内は許可）』とか、そんなことが書いてある。
ここは水族館の資料室だ。あなたはここで様々な海の生き物の生態が書かれた本や、あるいは水族館職員のつけた記録を読むことが出来る。
――そして、この水族館には存在しないはずの、『人魚』という存在について、非常によく知ることが出来るだろう。

*知識全振りユニオン*
*ユニオン購入は独断脳死予定*
*細かいことは以下のURL*

http://midnight.raindrop.jp/trieste/union.html