ENo.0163　《不殺の魔王》と《神殺し》

――頭の中がきんと澄み渡っていくのを感じる。
この世界にやってきてから第14週目。約束の期限のすぐ目の前。
時間が流れれば流れるほど、自分たち魔王が巻き込まれている事態は悪化していく。
底なし沼に足を取られたときのように。どんどん後戻りができない方向へ。
ああ、どうやらこういったことに巻き込まれるのは世界が変わっても――そして、人間でなくなってしまっても、変わらないらしい。

頭の中が、きんと澄み渡っていく。

鈍っていた思考が冴え渡り、いつもは思い浮かばない考えさえ次々に思い浮かんでくる。
シュニーフィカはこの感覚を知っている。ただのプレイヤーで、ただのアバターだった頃はなかった感覚。
不殺のラスボスと呼ばれるようになってから感じるようになったそれは――大きなものと戦う前に起きる現象だ。

気に入らないと思っていた。
初対面から明らかな嫌悪の感情を向けられて、気に入らないと思っていた。
おそらくこの感情は落ち着いてからでも変わりそうにない。

けれど――それ以上に気に入らないものが、今のシュニーフィカにはある。

何かを成し遂げようと向かっていく姿は、とても美しいものだ。
何かを救おうと強大な相手にも臆さず向かっていく心は、とても美しいものだ。
たとえ相手が気に入らなくても、その姿や心は、とてもとても美しい。
不殺のラスボスと呼ばれるようになってから、シュニーフィカはその光を何度も見てきた。
今まではその光を持つ者を何度も叩き伏せ、追い返していたけれど、この世界ではそれをする必要がない。

「……ならば、その光が消えないように、手を貸したって怒られないはず」

静かな声で、小さな声で、そっと呟く。
彼が見せてくれた光はとても美しかった。叶うのならば、もう少しだけその光を見ていたい。
消えないように。消されないように。もう少しだけ。
そのためなら、自分は何度だって剣を手にとってみせよう。
逃げるのをやめて、何度だって立ち向かってみせよう。

自分でもわからないずっと奥深く。
何かが静かに反応したような気がした。

――それは、《不殺の魔王》が座していた場所。
仮想と電子の隙間、誰にも立ち入られぬはずだった孤独の籠。
迷い込んだ者を引き込み、王とする、美しくも残酷なる水晶の牢獄。

淡く七色に輝く水晶が散りばめられたその場所を模した空間は、死を好まぬ魔王と常に共にある。

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◇ 魅力と笑顔でなんやかんやしたいユニオン。
◆ そのときの気分で魅力と笑顔をあげていきたい。