ENo.0163　《不殺の魔王》と《神殺し》

「……これは……やっちゃったね、魔王様……」
「……やってしまいました、燕さん……」

ダンジョン経営をするようになって第11週目。
多くの魔王がもうすぐ訪れる“おもてなし”の時のために準備を進めている中、シュニーフィカと燕の二人は自分たちのダンジョンの倉庫を見て表情を引きつらせていた。
ごちゃごちゃと物が積み込まれた室内は、以前までは大体片付いていたのに、今はたくさんの在庫や商品を作るための材料で溢れかえっていた。
二人でこまめに倉庫の整理をしているつもりだったが、第11週目にして、ついに倉庫に物を入れることができなくなってしまった。
ごちゃごちゃになっている室内を見つめたまま、シュニーフィカはがっくりと項垂れる。

「……本当にすみません……私がもっと気をつけるべきだったのに……」
「いや、これは僕にも非がある。僕ももう少し在庫状況に気を配るべきだった。……材料は定期的に送られてくるし、仕入れや商品の開発もあるから、物で溢れかえる可能性が高いことは予想できていたし」

シュニーフィカの隣で、燕が頬をかきながら言葉を紡ぐ。
そうだ、予想できていた――それなのに、今回物を溢れさせてしまったのは、今までなんとかなっていたからすっかり油断していた。
くしゃくしゃとシュニーフィカの頭を撫で回してから、燕は彼女よりも先に倉庫の中へ足を踏み入れる。

「とりあえず、今日は倉庫整理から始めようか。勿体無いと思って余った材料も取っていたけど思い切って捨てよう」
「は、はい。……商戦までに終わるでしょうか……」
「あー……まあ、うん、僕と魔王様で二人いるんだから、なんとか商戦まで間に合う……と思おうか、うん」

自信なさげに呟きながら燕に続いて倉庫へ足を踏み入れたシュニーフィカに対し、燕は苦笑いを浮かべながら返事をする。
共にダンジョンを経営するうちにわかったことだが、シュニーフィカは「もしかしたら使うかもしれない」と考えて、なかなかアイテムを捨てられないタイプだ。
そして燕自身も旅をしていた頃の癖が抜けず、もしものときに備えて道具や物はできるだけ残しておこうと考えてしまう。
――つまり、物を捨てられない人間が二人揃っているのだ、この場には。

「……さて、頑張ろうか。魔王様」
「は、はい……」

二人揃って若干遠い目をしながら、必要なものとそうでないものに分類し、倉庫整理を始める。

――結局、間に合いそうになくユニットの二人にも協力を要請したのは、言うまでもない。

――それは、《不殺の魔王》が座していた場所。
仮想と電子の隙間、誰にも立ち入られぬはずだった孤独の籠。
迷い込んだ者を引き込み、王とする、美しくも残酷なる水晶の牢獄。

淡く七色に輝く水晶が散りばめられたその場所を模した空間は、死を好まぬ魔王と常に共にある。

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◇ 魅力と笑顔でなんやかんやしたいユニオン。
◆ そのときの気分で魅力と笑顔をあげていきたい。