ENo.0163　《不殺の魔王》と《神殺し》

夜宮燕から見て、シュニーフィカ・エンディローアという少女は、ひどく寂しがり屋の女の子だ。
はじめて見たときは不思議な雰囲気がある少女だったが、話してみればみるほど、隣で共に時間を過ごせば過ごすほど、そのような印象が強くなっていった。
寂しがり屋で、人見知りで、だけどとても不器用で――そんな彼女は、燕から見て、ひどく不安定に見えた。
それは、まるではじめて会ったときの坏架を連想させるもので――だからこそ、心配になってしまう。

きっと、彼女は想像できないほどに冷たく孤独な世界を味わってきたのだろう。
元々そういう性格だったのか、環境のせいでそうなったのかは、今の燕にはまだわからない。
しかし、自分たち以外の魔王を見るときの目は、手に届かないものを見るときのようで、見ていてなんだか苦しくなってしまう。

「……笑っていてほしいって思うんだけど、ね。個人的に」

自分はまだシュニーフィカと出会ってから日が浅く、自分も彼女のことをほとんど知らない。
だから、一体どのようなことがあったのか話してくれるのは、もっと随分先のことになるだろう。
この世界にいる間に、自分自身のことを打ち明けてくれるかもわからない。
もしかしたら、ずっとシュニーフィカのことを詳しく知らないまま、この世界から離れる日が来てしまうかもしれない。
いつか話してほしいと、個人的には思っているが――こればっかりは難しいものだ。

「……とりあえず、今は僕の魔王様があれこれ無理をしたりしないか、しっかり見ておくことから始めようかな」

心を開いてもらうには、まずは信頼関係を築くことが大切だ。
同時に、相手に甘えても大丈夫な相手だと思ってもらうのも必要だと考えている。
となると、シュニーフィカのことをよく観察して、気を配って、彼女のことをしっかり支えていくことから始めるのが一番だろう。
片方しか残っていない手で軽く自分の頬を叩き、鏡に映っている自分自身へいつもどおりの笑顔を向ける。
夜宮燕がシュニーフィカ・エンディローアと名乗る魔王と共に過ごす日々は、まだまだ始まったばかりだ。
どれくらいこの世界にいれるかはわからないけれど、とりあえず出来ることから少しずつ始めていけばいい。
鏡の向こう側にいる自分自身にもそう言い聞かせて、燕は腰に差している相棒を軽く小突いた。

――復讐の旅を終えてからはしていなかった、やる気を出すときの癖だった。

――それは、《不殺の魔王》が座していた場所。
仮想と電子の隙間、誰にも立ち入られぬはずだった孤独の籠。
迷い込んだ者を引き込み、王とする、美しくも残酷なる水晶の牢獄。

淡く七色に輝く水晶が散りばめられたその場所を模した空間は、死を好まぬ魔王と常に共にある。

++++

◇ 魅力と笑顔でなんやかんやしたいユニオン。
◆ そのときの気分で魅力と笑顔をあげていきたい。