ENo.0163　《不殺の魔王》と《神殺し》

――この世界にやってきて、第12週目。
じわじわと、けれど確かに近づいてくる“終わり”の瞬間を前に、シュニーフィカはとあることをよく考えるようになっていた。

この世界が“終わり”を迎えた後のこと。
自分は一体、どこへ行くのだろうか――と。

そもそもシュニーフィカ・エンディローアは、ゲームにあるダンジョンの外へは行けない存在だった。
まるで誰かに縛り付けられているかのように、ログアウトすることもできなければ、外のエリアへ移動することもできない『不殺のラスボス』――そういう存在だった。
けれど、それが今、何故かこうしてダンジョン以外の場所へ移動して、外の世界の人間と言葉を交わすことができている。
ダンジョンの中にシュニーフィカが居続けることが『正常』だとしたら、自分が今体験しているこれは――『異常』な事態だ。

だからこそ、わからなかった。この世界が終わったあと、自分はどこへ行くのか。

ダンジョンの中へ戻るのか、それともどこかへ消えてしまうのか、はたまた現実の世界へ帰れるのか――様々な可能性があるが、それも全てシュニーフィカの予想と願いでしかない。
はっきりと“この世界が終わったらこうなる”というものは見えていないままなのだ。
故に、シュニーフィカは自分がこの先どうなるのか、考えてしまう。

「……考えても仕方がないことだと、わかっているけど」

それでも、考えずにはいられないのだ――自分は、ひどく臆病で不安がりな人間だから。
人間を主張するには、少々かけ離れてしまっているようにも感じるが。
小さく息をついて、次の商戦までの空白の時間、シュニーフィカは目を伏せる。
瞼の裏に広がる真っ暗闇はダンジョンの中で何度も見ていたものと同じだが、この場所にはダンジョンの中にはなかった他の誰かの気配がある。

ああ、願わくば。願わくば、この日々がもう少しだけ続いてくれますように。
この世界が終わったあと、自分がどうなるのかわかる前に、終わりの時が訪れたりしませんように。

――それは、《不殺の魔王》が座していた場所。
仮想と電子の隙間、誰にも立ち入られぬはずだった孤独の籠。
迷い込んだ者を引き込み、王とする、美しくも残酷なる水晶の牢獄。

淡く七色に輝く水晶が散りばめられたその場所を模した空間は、死を好まぬ魔王と常に共にある。

++++

◇ 魅力と笑顔でなんやかんやしたいユニオン。
◆ そのときの気分で魅力と笑顔をあげていきたい。