ENo.0092　エン・レイ

【13ページ目：皆、大事な人がいるのです。】

　ユリアさんとコルヴスさんのお話はまだ続いています。
　お二人がいた世界の話は、やっぱり私にはわかりかねますが、ユリアさんにも大事な誰かがいた事だけは、よくわかりました。
　その人は今、どうしているのでしょうか。どこにいるかわからないユリアさんを心配して、それでも帰ってくると信じて、待ち続けているのでしょうか。
　魔王の存在を忌避していたレヒルさんも、大切な人を失わないように行動してきたのだというのもわかりました。
　皆、大事な人がいるのです。大切な人の為に、誰もが力を尽くしているのです。それがこの、四畳半魔王城の存在する意義なのだと思います。

　だから、私にできる事も、ひとつだけです。

「決戦に備えて、究極のブレンドを作りました」
「ああ、そりゃいいんじゃねえのか」
「エクストリームブレンド『黒の死神』です」
「……あ？」
「エクストリームブレンド『黒の死神』」
「……二回言わねえでいい」
「何だよそれ、世界の命運懸けた決戦に死神とか、めちゃくちゃ縁起悪いじゃねえかよ」
「あら」
「向こうは魔王を殲滅させるほどの力を持っているのでしょう？　それならこっちだって『死神』で対抗してもいいいではないですか」
「それに、私の『黒の死神』は、最強ですから。いつだって私を守ってくれるでしょう？」
「……言ってくれるな」
「しかし、最後まで、俺に剣を抜かせないで、あくまで物を売るだけでやり抜くつもりかよ」
「なら、とことん付き合ってやろうじゃねえか。カフェ『アルテア』の魔王の戦いに」
「ありがとうございます！　百人力です！」

『資料室』と書かれたドア看板の下に、『飲食厳禁　飲食はフードコートで』とか、『資料の外部持ち出し厳禁（館内は許可）』とか、そんなことが書いてある。
ここは水族館の資料室だ。あなたはここで様々な海の生き物の生態が書かれた本や、あるいは水族館職員のつけた記録を読むことが出来る。
――そして、この水族館には存在しないはずの、『人魚』という存在について、非常によく知ることが出来るだろう。

*知識全振りユニオン*
*ユニオン購入は独断脳死予定*
*細かいことは以下のURL*

http://midnight.raindrop.jp/trieste/union.html