ENo.0006　凍てつく雪の魔王『フロワ』

「がおーっ！　ぶわーっ！　ばりばりーっ！」
「ちゅどーん！　ぐわ～っ、やられた～！」

赤、青、白…。
カヴが、いろんな色の　おもちゃの　りゅうを　手に持って、遊んでる。
なんだか　楽しそう。

「カヴ。それって、何…？」
「ドラグーンっていうんだ。」
「これはただの模型なんだけどね…本物はもっとでっかくて、すごいんだよ！」
「そう…。ドラグーンって、強い？」
「うん！　フロワみたいな本物の竜と比べたら…分かんないけど、とにかく強い兵器なんだ！」
「わたしね、もう少し大きくなったらドラグーンに乗る訓練をするんだ！　敵をやっつけて、街を守るヒーローになるの！」

すごい。ヒーローになるって、すてきな　ゆめ。
でも　それって…。

「それってつまり…せんそう、するの？」

フロワが　そう言った　とたん。
おやしきの中の　空気が　いつもより　すうっと　つめたくなった　気がした…。

「…当たり前よッ！　今わたしたちがやってることだって、戦争じゃない！」
「戦って、殺して、奪って…それでも、違うっていうの？」

ゆうしゃを　たおし、お金を　うばって、村を　やく。
たしかに、フロワたちの　していることは…。

「…………戦争だと、思う。」
「強くなきゃ、戦わなくちゃ、生き残れない。」
「フロワのいた場所がどんなところかは知らないけど…。」
「わたしはそういう世界で、育ってきたから。」

せんそうは…たたかうことは。生きるための　しゅだんの　ひとつ。
それでも、いたたまれないような　気持ちが、フロワの　こおった　心でも　ひしひしと　感じたの。

「…ごめんね。いきなりこんなこと話して。」
「いいの。それよりも…フロワにも　ドラグーンのこと…いっぱい教えて？」
「うん！」

カヴの顔は、いつもの　明るいそれに　もどった。

あらゆる種類の木々がねじれ、取り込まれた一本の大樹が生えている。 焦げかけの看板に『プランタ・タルタリカ『ルマ 』・バロメッツ』とあるが特に羊が生えてくる様子はない。
様々な形の葉が作る木漏れ日の下にあるハンモック、はめ込まれた丸い窓。ごつごつとした木肌葉が黄色赤に色づき、時々あるところから甘い香りの煙が立ち上る以外このツリーハウスに変わった様子はないようだ。
朝焼けを浴びると燃えるような輝きを見せ、ぱきり、ぱきりと樹が伸びる音がして、目覚ましがわりになる。正直早すぎる。