ENo.0006　凍てつく雪の魔王『フロワ』

フロワが　よびだした　しもべ、カヴは　いつの間にか　イエティの　うでの　中で　ねていた。
少し　うらやましいけど…。カヴは人間。りゅうの　フロワより　強くないの。

でも。カヴの体からは、強い　まほうの　力を感じる。
フロワの　力とは　べつの、温かなもの。

カヴは、ひとりじゃ　まほうが　使えないから、『まどうき』と言う　キカイに　たよっているって　言ってたけど…。
人間にも、こんな力を　持っているヒトが　いるんだ。

ねている　カヴの手に　ふれて。フロワは　じっと考える。

「…？」

カヴは　ふあぁ、と大きなあくびを　ひとつした。

「ごめん…起こしちゃった？」
「ううん。ちょうど今起きようと思ったとこ！」

カヴは、フロワの　手を強く　にぎり返してきた。
…あったかい。


カランカランカラン…


おやしき中に　ひびく　かねの音。しんにゅう者が来た　合図。

「そう…。ねおきで　悪いけど。また、おやしき　守るの　手伝ってくれる？」
「もっちろん！」

そう言って、カヴは　イエティの　うでから　いきおいよく　飛び出した。

あらゆる種類の木々がねじれ、取り込まれた一本の大樹が生えている。 焦げかけの看板に『プランタ・タルタリカ『ルマ 』・バロメッツ』とあるが特に羊が生えてくる様子はない。
様々な形の葉が作る木漏れ日の下にあるハンモック、はめ込まれた丸い窓。ごつごつとした木肌葉が黄色赤に色づき、時々あるところから甘い香りの煙が立ち上る以外このツリーハウスに変わった様子はないようだ。
朝焼けを浴びると燃えるような輝きを見せ、ぱきり、ぱきりと樹が伸びる音がして、目覚ましがわりになる。正直早すぎる。