ENo.0006　凍てつく雪の魔王『フロワ』

「フロワって本物の竜なの！？　ねぇ、どんな魔法使ってるの？」
「ええと、フロワは…。」
「…あ！　フロストドラゴンっていうから、氷の力ね！」
「……。」

カヴ。フロワより　3つ年上の　おねえちゃん。
明るくて　元気なのはいいけど、せっかちで　しゃべるのが　早い。（ターピさんもだけど。）
フロワ、ますます　つかれちゃうの…。

おまけに…。
「あいたっ！？」
よく走り回るから、しょっちゅう転ぶの。フロワの　やしきの　氷のゆか、ツルツルだし。
フロワは　その度に　手を取って起こしてあげるんだけど…。

「へくしっ！？」
「フ、フロワちゃん…それにしてもここ、寒いね。」
「わたしの町も、割と寒いところだけど…。ここはまるで冷凍庫の中だよ。」
「フロワちゃんは平気なの？　このままじゃわたし、風邪ひいちゃいそうだよ…。」

うっかり、してた。
カヴは人間。フロワの　世界にも、よくいる　ふつうの人間。
ゆうしゃたちとの　たたかいでは、この寒さも　フロワの　力になるのだけれど…。

やしきの　あっちこっちで　転んで、あざだらけになっちゃうのも、なんかいや。
フロワは、少しだけ考えた。そして　思いついたの。

しんちょうに。自分の心を　とかして。
手の中に、小さな氷の　けっしょうを　作り出す。
それは　青い　かがやきを　放っていた。

「カヴ、こっち来て。」
「…なぁに？」
「ちょっと、動かないで。いい？」
「…？」
「ぴゃっ！？」

青く　かがやく氷は　カヴの　むねに　すいこまれて、消える。

「今、何したの…？」
「フロワの、おまじない。フロワの　力をちょっとだけ、カヴに　あげたの。」

これで寒さに　こごえたり、氷の上で　走り回っても、転んだりしない。

「…寒くない！　フロワちゃん、すごいや！」

そして　ここでの　これまでの出来事を　カヴに　せつめいしたの。
カヴは　いっしょに　たたかおうって、フロワに　言ってくれた。

「何かほしいもの、ある？　フロワ、なんでも作れるけど…。」
「えっとね、わたしは――」

あらゆる種類の木々がねじれ、取り込まれた一本の大樹が生えている。 焦げかけの看板に『プランタ・タルタリカ『ルマ 』・バロメッツ』とあるが特に羊が生えてくる様子はない。
様々な形の葉が作る木漏れ日の下にあるハンモック、はめ込まれた丸い窓。ごつごつとした木肌葉が黄色赤に色づき、時々あるところから甘い香りの煙が立ち上る以外このツリーハウスに変わった様子はないようだ。
朝焼けを浴びると燃えるような輝きを見せ、ぱきり、ぱきりと樹が伸びる音がして、目覚ましがわりになる。正直早すぎる。