ENo.0254　惑乱する月齢の魔王『アルリアクルリア』

ようこそ。

ここは我が月世界。

我が名は惑乱する月齢の魔王。

あなたさまがたが最後のこの城の訪問者となりましょう。

はは、とはいえこの城は実のところ幻。
その実体の大部分を、ここになき、《秘密の部屋》に移しております。

あなたさまがたの、いやいやだか望んでか知らぬが従う商売ごとのまねごとなら、
ここでいくらかはできましょう。
好きなだけ荒らしていくがよいでしょう。
その正気まがいの人間性と引き換えに……。

はははははは。

いささか、昔話でもさしあげられればよいのですがね。
所詮15週の異邦人。大した来歴のあるわけでもない。
それより以前のこの魔王の身の上話は、あなたさまがたが理解するには、いささか手に余ることでしょう。

いま少しのあいだだけ、
ここでお付き合いくださいませ。

わが分心が、第二宇宙速度を突破して、
この星の天を突き破り、
はるか彼方へのがれ出るその時まで。

夢、希望、奇跡、決戦の果ての大勝利、
明日かならずと交わす約束、
そんなものを信じるのは勇者の仕事。

魔王にその勇気はない。

月のように隠れるのみ、のがれるのみ。

ああ、このアルリアクルリアも、
あなたがたのようであったなら、
生きて明日を喜び合えたのやもしれないが……


この目には滅びしか映りませぬ。
我が目はすべてを見通す予見。
むだなあがきの徒花なれば、
この世界はもうおしまいでございます。
はははははははははははははははは。


はははははははははは。


ははははは。

月世界。