ENo.0254　惑乱する月齢の魔王『アルリアクルリア』

　　惑乱する
　　　　　　　　　　　月齢の魔王は微笑んで坐す。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　月世界で
　　　　　　玉座で　　　　　　　　昨日で
　　　　　　　　　　　　　明日で　　　　　　海底で
　　　　　　　　　天空で　　　　　地表で
　　　　　　はない
　　　　　　　　　　　　　　　どこかで。

　　　　　　　　どこかで。



　　　　さても禁忌指定とは愚かなること。
　　　　世界は外因によって滅ぶもの。
　　　　いかに内因を取り除いたところで、
　　　　落ちてくる星々には無力でございます。
　　　　滅びはいつの時にもほかなる天空より来たるもの。
　　　　異なるもの、外来種、異邦人、
　　　　旅人、漂流物、誤配物、
　　　　訪れたもの、届いたもの、流れ着いたもの。
　　　　誰を生贄としたところでよそものには届かない。
　　　　届かないのですよ。
　　　　猫とても犬死にする。
　　　　禁じられて忌まわしき、遠ざけられた供犠にさえ、
　　　　筋の通った報いはない。
　　　　過客はいずれにせよ訪れて、一切を滅ぼし燃え尽きる。
　　　　《死》は外縁より来たるもの。
　　　　そして内包を縊るもの。
　　　　逃れようとするならば、客を帰すよりほかにない。
　　　　なれどこの星は契約の星。
　　　　客をもてなす歓待こそが、世界の本懐に暮れ残る。
　　　　歓待を捨てれば、世界は別様に滅びましょう。
　　　　禁忌指定とは愚かなること、
　　　　それぞれが愚かなしらふで板に乗り、
　　　　世界をそれぞれに滅ぼします。
　　　　はは、はは、
　　　　おのれの見たもの見てしまったもの、
　　　　それら予見に正直になるがよろしい。
　　　　この星はもうおしまいでございます。


　

月世界。