ENo.0071　魔王【悲劇の王】

【登場人物】
悲劇の王……生きては居るが貯めた金は消え、買ったアイテムは壊れた。人生そんなもんですよねあっはっはと笑いつつ、またお金マイナスへと足を踏み入れるだろう。村を焼きた～い！！！あと足音うるさいんですけど上の階ですか？それとも心臓に小人さんでもいます？
継ぎ接ぎの騎士……蛇口を刺されそうになったが相手を一発殴って正気へ戻した。それと、スナック感覚で村を焼こうとするな。確立低いんだぞ。
サキュバス……罪状：niceboat．千夜一夜の黄昏の果てに悲しみの向こうにたどり着けるかは謎だけれど、とりあえず大切な人はもういないのだ。

【一言日誌】
今回は魔法いっぱい発動できた！

【日誌】
「……しんどい時間だったな」

　息を吐く、篝火は遠く――自分らの手前でなんとか過ぎ去ったようだ。
返事は無い、魔王である彼は――夢から覚めたあと、なんか耳から足音が消えないんで～と言いつつ席を外していた。
そうするとやっと感情や身体が一時の安堵を得る。汗が頬を一筋過ぎ去っていった。

「おつ　かれ　さまです、管理者　様。すこし、　やす　まれ　ては　いかが　ですか」

　そうしているとサキュバスが、お茶を煎れてくれた。
おかしな言葉使いは、舌が切られているからか。それでも言葉と行動を紡いだ礼を言うと、彼は曖昧に微笑む。
健全サキュバス、たしかシェヘラザード型といっただろうか。名前は必要無いらしい。
彼もまた魔王の庇護下にあり、この本の砦のなかのどこかの一冊から掬い上げられたものなのだろう。
――かくいう自分も、そうなのだから。

　悲劇の王の固有の能力らしい、戦場で出会った魔王達もまた様々な能力を持っていたが……。
似たようなものはあれど、やっぱり【本の中の登場人物（あるいは物質）を引っ張り出す】というものは他人が持っているのを見たことが無い。俺と、この人間みたいなサキュバスと、あとは最近入ったアンドロイド。
ウィザードなのに明らかな女性型である彼女は、鋼のような無表情で蛇継の護衛で彼に付いていった。
お茶に口を付ける。温かく、紅茶と違う――深い苦みを感じた。
見ると、緑色のお茶だった。自分の舌に合ったので頬が緩むとシェヘラザード型も静かに喜んでいた。

「お前は、ここに来る前の事って覚えているか？」

緑茶を飲みながらふと疑問をぶつけてみる。彼はええっと、と舌足らずな声で話し始めた。

「質問には　回答。えと…　そうですね。覚えてます。　おれ　悪いこと　しました」
「悪いこと」
「んと……、本当は　やること　任された　大事な　仕事　あったんですけど……それから　俺…　自分のことを　優先して　目を逸らして　しまって。いっぱい　失いました、　どうしようも　ないときに、上位管理者　魔王様　に拾って　いただきました。　だから　今度は　俺は　人のために　自分を　使おうと　思います。俺は　……俺が　俺の為に　選んだことは　いつも　間違ってばかり　だったから　もう　いいんです」
「……そうか」

痛みを帯びた表情、深い海に沈んだような後悔。ソレに関しては我らが魔王にも似た顔で。
空気を重くさせたことを気に病んだのか、サキュバスはお茶のおかわりを煎れ始める。

「……お茶、気に入って　いただけましたか？」
「ああ、これは美味いな。紅茶とは違うものか？」
「はい、緑茶　です。紅茶と同じ　茶葉　で　発酵させずに　作るんですよ。昔　居たところでは　よく　飲んでたんです」
「……なんと、ずいぶんと味が違うのだな。……あとで、帰って来るであろうトンチキにも煎れてやってくれ」
「かしこ　まりました。あの……貴方は」
「ああ」

「貴方は、後悔がありますか？」


穏やかな時間はすぐに終わる。みれば、――新たな勇者がやってくる気配がした。