ENo.0040　Henyey track

「……おい、ちょっと止まってくれ」
「どうしましたか」
「どうしましたか、じゃないぞ。今の状況を確認しなさい」
「……"摘発状態"かつ破産寸前ですね。ですが今回の戦績は悪いものではないかと」
「確かにそうだが……いやな、行動できなければそれまでだろう。対処すべきだ」
管理者からの苦言。確かに探索に支障が出ればそれまでだ。ヘニエイ・トラックは現在の環境を考察する。両方が重なれば確かに面倒なことになるか。手持ちの装備を見直し、装着する。
「……摘発状態を解除します」
「そうしてくれ。今必要なのは探索と集金だ。」
やれやれ、と小声で呟く音声が入る。ヘニエイ・トラックが今回の戦果を改めて確認すると、何かが懐に入っていることに気付く。見れば、硬質グミなるものが入っている。なるほど、アナウンスにあった”手持ちを開けておけ”という指示はこの事か。手に取ってまじまじと見てみる。
「今手に持っているものは購入したわけではないのだろう？」
「はい。参加者へのプレゼントかと」
「リップサービスか。もらえるだけもらっておくとしよう。」
「了解しました。」
ヘニエイ・トラックが管理者と連絡を取る中で、ハービック・ハローは新たに能力を獲得した。視野情報の強化――ここでは全天識術と呼ばれるそれだ。レンズにパーツを装着し、より広範囲の状態を察知可能になったのだ。ヘニエイ・トラックが己の持つ領域管理に苦悩する中で、それらは着実に能力の刃を研いでいる。