ENo.0080　花と羽毛と群棲の魔王

勇者達が立ち去り、ダンジョンに静けさが戻ってくる。
無事退けられた安堵に緊張の糸を解き、アルラウネは小さな小さな助っ人達に駆け寄っていった。

「ミニちゃん！」

「ぴゃう！ぷぷーぴゃ！」

ラウおねーちゃん！

「があうあ？」

大丈夫か？

「……」

……

色とりどりのもふもふ――ミニもふ――が口々に鳴き声を上げた。
一部は無言ながらもぴょんぴょんしている。
それを見渡すアルラウネ――ラウ――は言っている意味を理解しているらしく、うんうんと嬉しそうに頷きながら、手にあたる葉でミニもふ達と握手を交わしていた。

「また会えて嬉しい！」

「ぴゃあん！」

アタシも！

「ぎゃあう、ぎゃうぎゃう！」

当たり前だろ！

「ぴゃぷぴゃぷ！」

約束！

「ええ……約束、だものね」

瞳はなくとも、そう零した声は涙を含んでいるように思えた。
まだ経済と言う秩序が保たれていた頃、ラウとミニもふ達は出会った。魔王と使い魔として。こう見えてミニもふ達が魔王であり、ラウが使い魔である。
スーパーデプスが生まれ、魔王達が時空を越える直前、外からやってきたミニもふ達は元の場所へと戻り、ラウは生まれた地に残る事にしたのだ。
その時両者は約束した。

また会おう。

シンプルだが、とても大切な約束。
どんなに世界が荒廃しても、再会すると言う約束を果たすため、ラウはダンジョンを守ってきたのだ。

「ぴゃあきゅー」

あのね。

「ん？なぁに？」

「ぎゃうー、がうあうあ」

実はオレ達だけじゃないんだ。

「ぴゃぷぷ、ぴきゅぴきゅ」

ここに来たの。

「え……？」

誰だろう。以前、ミニもふ達の元で一緒に戦った使い魔の誰かだろうか。
いまいち心当たりがなく、ラウは筒を傾けた。
ミニもふ達は楽しそうな笑みを浮かべながら、道を開けるかのように左右に分かれる。
再び、ラウは勇者とは違う気配を感じていた。