ENo.0022　龍魔王と蛇参謀と蝙蝠ちゃん

サーキナル「『今日は自分が夕食を作る！』って張り切りながらヴェンデが厨房に行ってから四時間が経つんだけど……」
ピピ「何かやらかしたんですかね？　そういえばヴェンデッタさんの作る料理って見た事ないですし」
サーキナル「んー……けど、僕が子供の頃はヴェンデが料理を作ってくれていたような気がするよ？」
ピピ「どうしてそんな曖昧な言い方なんですか！？」
サーキナル「たしかに……あれ？　どうしてだろう？」
ピピ「魔王様……もう一度、じっくりと幼少期の記憶を思い出してみては？」
サーキナル「…………」
サーキナル「よく考えたら、メイドさん達が作ってくれていたよ……どうしてヴェンデが作っていたように記憶していたんだろう？」
ピピ「どう考えても呪術的なナニカ案件です」
サーキナル「しかも難易度高めの記憶操作系っぽいよね……」
ピピ「必死すぎでしょうあのヒト……」
ヴェンデッタ「何か言ったかの？」
ピピ「魔王様に好まれるための涙ぐましい努力ですね！」
ヴェンデッタ「まったく……嘘を真にするために一週間レシピを読み漁っていた努力が小娘のせいで水泡と化したわ」
ピピ「料理が出来ないのを呪術で誤魔化した十数年前の自分を叱ってください……」
ヴェンデッタ「……」
ピピ「はいいつものガン無視っ！」
サーキナル「まあ、今はちゃんと美味しそうな料理を作れているみたいだね……」
ピピ「たしかに美味しそうなご飯とお味噌汁とハンバーグですけど、この三品で、四時間です……？」
サーキナル「……たしかに」
ヴェンデッタ「……副産物との闘いが苛烈を極めたのじゃ」
サーキナル「？？？？？？？？？」
ピピ「？？？？？？？？？？？？」
ヴェンデッタ「最近気がついたのじゃが、此方が料理を完成させると副産物として呪物的なモンスターが発生するんじゃよ」
サーキナル「謎のスキル過ぎる……」
ヴェンデッタ「そして破壊の限りを尽くそうとして制御不能なのじゃ」
サーキナル「厄介すぎる……」
ヴェンデッタ「しかもな、料理の品数や質とモンスターの強さが比例しておるんじゃ」
ピピ「今回の三品でその状態ならフルコースなんて作った日には世界が終わりそうですねっ！」
ヴェンデッタ「やかましいわ。まあ、副産物の亡骸も役に立たぬ訳ではなく、呪物として使えるので悪い事ばかりではないのじゃがなぁ……」
ピピ「呪物絡みで『良い事』は殆どないです……」

※料理自体はとっても美味しかったです。

　龍魔王は思った。
『ユニオンというモノがあるらしい。参加したいがウチの部下の性格上波風立たないユニオン活動というのは不可能なのではないか？』
　龍魔王は決めた。
『じゃあ自分でユニオン作っとこ』
　城の四分の一のスペースをユニオン用のソレへと変換。
　浮遊要塞となって魔王城の上をフワフワと浮いている。

　魔王と部下二人は今日も知識を求めて其処彼処から掻き集めた書物を読み漁る。
　要塞の中に眠る知識に興味があるのならば声をかけてみるのもいいかもしれない。
　運が悪いとクソゲーの攻略本等を見せられるやもしれないが。