ENo.0022　龍魔王と蛇参謀と蝙蝠ちゃん

サーキナル「またピピがいないんだけど？」
ヴェンデッタ「ああ、あの小娘は山登りに行くなどと言いながら出かけたが？」
サーキナル「……いつ？」
ヴェンデッタ「四日前じゃ」
サーキナル「全然聞いてないんだけどっ！？」
ヴェンデッタ「ああ、ここ数日、書庫で忙しそうにしておったからのう。別によいかと思っての」
サーキナル「よくないよ……？　けど、それにしても、異世界で数日かけての登山とか、あの子は本当に元気だね」
ヴェンデッタ「まあ、本人は日帰りで行くと言っておったのじゃがのう」
サーキナル「……？」
サーキナル「……事件じゃん！　遭難してるじゃん！」
ヴェンデッタ「どうせあの小娘ならひょっこりと帰って来るじゃろ……」
サーキナル「それはそうだけどさ……その山で好き放題していないかが不安だよ……」
ヴェンデッタ「……」
ヴェンデッタ「たしかに」
サーキナル「山の所有者とかがいたら怒られそうで心配なんだよね……」
ヴェンデッタ「何もやらかしていない、という事はまず無いじゃろうからのう……」
ピピ「いや、ワタシを何だと思ってるんですかっ！」
サーキナル「あ、帰ってきた」
ヴェンデッタ「迷惑千万クソ小娘、かのう……」
ピピ「生還して早々ヴェンデッタさんの心無い言葉がピピちゃんを襲うっ！」
サーキナル「……けど、本当に大丈夫だったの？　色々と」
ピピ「はい！　心身ともに元気ですよっ！　遭難という状況でも興奮できた自分に無限のポテンシャルを感じましたねっ！」
ヴェンデッタ「山の中で変態生物とか作ってないじゃろうな？」
ピピ「作ってないですぅーっ！　何の変哲もない遭難でしたぁーっ！」
サーキナル(遭難の時点で色々とアレだけど……)
ヴェンデッタ「……ところで、何時ツッコミを入れるか様子を見ておったのじゃが、その大量の小瓶は何じゃ？」
ピピ「キャビアです」
サーキナル「何で……？」
ピピ「遭難した記念で帰りにマーケットで買ってきたんですよっ！」
ヴェンデッタ「話しておるだけで気が狂いそうなのじゃが」
サーキナル「遭難とキャビアが結びつかないんだけど……というかどんだけ買ったの……」
ピピ「まとめ買いをすると安くなるので、ついっ！」
ヴェンデッタ「限度があるじゃろ」
ピピ「けどとあるゲームでは最強アイテムなんですよっ！」
ヴェンデッタ「いや、パンに挟むだけでどんどん売れるような世界ならばよいがのう……」
ピピ「しかもめちゃくちゃ美味しいんですよっ！　これっ！」
ヴェンデッタ「商品を食うな……それはもちろん美味じゃろうが」
サーキナル「……うん、頑張って売ろう」
ピピ「あっ！　ところで魔王様っ！　今回は何を作るんですかっ！？」
ヴェンデッタ「話を変えたところで貴様は絶対にしばくから覚悟しておれよ……」
ピピ「」
サーキナル「なんか……うん、僕が出す炎を暖房として売ろうかなって……」
ヴェンデッタ(明らかに精神ダメージを受けておるが、大丈夫じゃろうか……？)

　龍魔王は思った。
『ユニオンというモノがあるらしい。参加したいがウチの部下の性格上波風立たないユニオン活動というのは不可能なのではないか？』
　龍魔王は決めた。
『じゃあ自分でユニオン作っとこ』
　城の四分の一のスペースをユニオン用のソレへと変換。
　浮遊要塞となって魔王城の上をフワフワと浮いている。

　魔王と部下二人は今日も知識を求めて其処彼処から掻き集めた書物を読み漁る。
　要塞の中に眠る知識に興味があるのならば声をかけてみるのもいいかもしれない。
　運が悪いとクソゲーの攻略本等を見せられるやもしれないが。