ENo.0106　CN:アドミラル

とうとうここを去る日が来た。
最初は不満しか無かったが
結果的には、楽しんでいたのかもしれん。
いろいろ名残惜しいが
やはり俺がいるべきはあの場所なんだ。
しかし

「樹の下で何してんだ兄貴？」
「黙れこの愚弟が」
「えっ、なんで！？」

何故迎えがこいつなのか。
他にも適任はいただろうに、
嫌がらせか、最後の嫌がらせか……

「なんかちょっと優しそうなふいんき？
　だったからいけるかと思ったけど、いつも通りかーそうだよなー」
「……優しそう、俺がか？」
「そうだよ、一瞬別人かと……いでっ、ちょ、
　痛い痛いいだい゛！！！」

あいかわらず訳がわからん。
脳を鍛えるにも、もう手遅れとはいえ
少しは努力してくれないだろうか。

「あー、ったく、やっぱ兄貴は兄貴だったよ！」

「…………当たり前だ」
「ははっ、あ、そうそう荷物全部積み終わったぜ！」
「先に言え」
「兄貴が変な顔してるから……嘘ウソ、そんな睨むなよー」
「いつも余計な口ばかり挟みおってからに。
　それにしても、このプレハブが丸ごと船になるとはどういう事だ」
「すげぇよなー、総隊長とその姉さんがどうのこうの聞いたぜ！」
「分からん。いや、おおよそ見当が付くがな……」

「さ、帰ろうぜ兄貴！
　みんな兄貴の事待ってるんだからよー！」
「待ってるのは俺ではなく土産だろう」
「どっちでもいいじゃねーか！」
「貴様の土産は抜いてやってもいいんだぞ愚弟」


しばらく過ごした大地を見下ろす
よく聞く言い回しだが
酷く長かったようで、とても短かった気がする
目の前に視線を戻すとカップが一つ
俺が今まで不服ながらも育てたもの
ここにきてようやく口にする

……
ああ、やはり俺は