ENo.0002　水底の薔薇の魔王

「おい、茶でも飲むぞ」
「……はいはい」


「ん？そんなのも知らないのか」
「悪かったな。そう言うなら自分で調べろよ」
「こっちもやることあるんだよ…… 少し勉強でもするか？」
「は？」
「本ならそれなりにあるぞ。上から投げ込まれてくるからな」
「……」
「面倒臭いって顔するな。知識無しは損するぞ」
「…………、そうか」


互いに慣れてきたのか、だんだんと口調や態度に遠慮が消えていく。
口は悪いが、それなりにはなっているようだ。



＊＊＊


「イチャイチャなあ……」
「神や魔王は皆そういうんじゃないのか」
髪の毛を弄りながら、興味なさげに言う魔王フォンターナと、
ジト目で見つめる従者イレーネ。

「一緒にするなよ」
「……そうか」

イレーネは、えらいひとの考えはよくわからない、と言った体で首を傾げた。
フォンターナは気にも留めない。

「まあ、一先ずは付き合うしかなさそうだよな。
行くぞ、イレーネ」
「……ああ」

（今日も護らないとな。
此処と、近くにいる住人を）


先を歩むフォンターナと、その後につくイレーネ。
広い城に、水の音と二人の靴音だけが響いた。