ENo.0161　万能戦士イエスマン

空の上、雲を突きなお上に伸びた塔が、そそり立っている。
その下に、青い男とゴーレム、そして白い男達が並ぶ。

……これでいいのー？
いやー、私は良いんだけどさー。

ゴーレムの頭部、空いた窓から声が漏れる。
些か困惑気味だ。

「十分だ。感謝する！」

男は拳を天に突き上げながら、こう応えた。

「君の目的とする高い塔に、私の要望を加えて済まなかったな。
契約が終了した暁には、私は、私が必要とされる次の世界に行こう。」
……いやー、エレベーターにするのは問題ないんだけどね？
【魔王】の問題については、何も解決してない気がするけどねー？
そこで死んじゃうんじゃないの？


感謝する男に、怪訝そうな声が上から響く。


「何、それは問題ない！」
「私は、私が必要とされる限りは死なん！！」


強い自信と力に満ち溢れた声が、周囲へと響いた。
それに対して、言葉を返すものは誰もいない。


「……まあ、たまにはこっちにも来いよー。」
「こっちは俺達でなんとかしとくからな。」
「面倒くせえなあ……」


白い男達も各々が、青い男に向けて言葉を返す。


「まだ今週の契約が残ってるだろ？
別れの挨拶は早いぞ。」


イエスマンも、ゆっくりと聴き終わった後にこう返した。

でーそいつらはどうするのー？

ゴーレムが差すと、イエスマンの中から赤黒い液状の物が湧いていた。


「此処にいても何も良いことは無さそうだからな。
幸い私の中に居れば影響も無いようだ、全て連れて行こう。」


そういうと、赤黒い物達はイエスマンの中に戻っていった。
「……ああ、そうだ。ちょっと良いか、神よ。」
なーにー？
「最後だから顔ぐらい見せてくれても良いんじゃないか？」
あっ、そういうことねー

ゴーレムが屈むと、イエスマンの目にゴーレムの中が入ってくる。
中は・・・空っぽだった。

「お前……塔そのものがお前だったのか！」


イエスマンの声に、驚きが交じる。

んー。別に隠してたわけでもないけどねー？

塔はそう、いつも通りの平坦な声で応えた。




「さて、最後の仕事に移るか。」
こういうと、イエスマンはポーズを取り、いつものように拳を固めた。