ENo.0103　鏡偽の魔王『あいせう』

ここだけの話やけどな、同業の魔王はんに通信を送るのは初めてやったさかい、変なノイズが入ってしもうた。
送るときに消えるタイプのやつやろー思っとったら全然消えてなかったんよね。
下調べやら確認やらはやっぱり大事やなぁ……
ほんま恥ずかしいわぁ……
あの後に色々確認したから、もう同じ失敗はせんはずやけども……

それ以外の毎回来る通信にも耳を傾けてみたんよ。
ウチがどう生きたいか……やて？
どう死にたいかやったら答えられるけど、生き方を問われてもようわからん。
ウチは雲のように流れ行くのみや。
魔王の力で神さんを作るゆうのも、何や罰当たりな話やな。
ヤバくなると強大な存在に縋りたくなるのはしゃーないけれども……

……とりあえず、気を持ち直して日記を書こうな。
案の定前回分が残ってしもうたから、それからや。
と、言っても、あの子とはほとんどお話しできとらんからコンパクトに収まるけども。

----------作成日誌　三回目(前回分)--------------

作成:竜の夢魔『アートリウス』・ミラージュ
属性:カルマ
種別:ドラゴン
違法性:100

ドラゴンを意識して作成。
極めて違法性の高い鏡像ができた。
見た目にドラゴン感は無く、華奢な人間の少女のように見えた。
身長は150cm代前半で、水色の長髪、金色に輝く目が特徴。
服装は、騎士のような鎧の上にローブを纏っており、神秘的な雰囲気を漂わせていた。
一旦、会話内容を記す。
「自己紹介、お願いできるー？」
「アートリウスと申します。ワタシは竜の夢魔で……え？　竜……？　う、ぐぅぅぅぅぅ……ッ！」
「どうした……んっ！？」

外見の大きな変化を確認。
彼女が『竜の夢魔』だと言った瞬間、その輪郭が靄がかっていき、全身が頑丈な鱗に覆われた怪人のような姿へと変わった。
その体格は変化前よりも二回り上で、どうしようもないほどの威圧感を放っていた。
会話はこの変化によって終了したらしい。
商品説明ができるほどに情報が集まっていないため、今回は省略することにした。


……うん、不思議な子やったな。
そういえば、前に作った半夢魔のあの子が夢魔のことを『怪人』やって言いかけとったっけ。
何か関係があるんやろか？
まあ、ウチはこれ以上首を突っ込むつもりはないけど。
さて、前回分は終わったし、ちゃっちゃと新しい子を作って今回分の日記を書きまひょー！


……はい、作製してきたでー。
テンションだだ下がりやけども、書いていきまひょー。

----------作成日誌　四回目--------------

作成:逸才鬼(いつのさいき)・ミラージュ
属性:カルマ
種別:ジャイアント
違法性:100

ジャイアントを意識して作成。
極めて違法性の高い鏡像ができた。
ジャイアントという名前である以上、巨大でなければならないはずだろ。
にも関わらず、出来上がったのは身長120cm足らずのクソ鬼だった。
桃色のシニヨンヘアと尖った大きな金の瞳、額から生えた二本の角が特徴。
服装は、露出狂のような論外ファッション。
最早服と言い張っているだけのただの紐。
疑心によって生まれる暗鬼ではなく、疑心を育む暗鬼。
あまり顔を合わせたくない、オレの知り合い。
以下、作製物との会話。
「逸才鬼、色々と言いたいことはあるけれど、一つだけ聞くわ。何でアンタがジャイアントなん？　此処は小人の国とちゃうで？」
「ふっふっふ！　いっちゃんは疑心を育む鬼ぞ？　巨人に限らず、様々な種族として活動するのは造作もない」
「……こいつひょっとするとジャイアントやないか？　っちゅう疑心を育ててその種族として存在できるゆうこと？」
「いかにも。オマエがいっちゃんを“じゃいあんと”として販売すれば、買い手はいっちゃんを巨大だと認識するようになり、実際に巨人に見えるようになる。すごいだろうっ！」
「普通に巨人を売った方がええやん……それに、やり方がやらしゅうて嫌いやわぁ……」
「ほほう、オマエが言えたクチかな？　ニセモノの雲外鏡よんぐゅッ！？」
「はあ、同じ顔見知りでもバンシーちゃんはええ子やったのになぁ……ま、支障なく使えるんなら利用させてもらうわ」
以上、作製物の口部破壊により終了。