ENo.0072　レユーサ・クェリフィート

『ぼんやりとツリーハウスの木を眺めてると、どんどん思い出すことがあるのです』


『ないすばでーを目指してたちっちゃな妖精さん……ナマコちゃんちゃ…ナマコちゃんとか』

『おにぎりをくれたブロウさんに、父様に似てたイレイスさん』

『剣のゴースト……だかなんだかのディーさん！ディーさんはぽわぽわしてるので心配なのです』


『リタちゃんには、抱えて空を見せたのです。こっちでもまたやりたいのですよ』

『ウィスカさんには風の魔力変換を教えてあげたのです。危なっかしかったのですけど……ファムタン、面白かったです』


『喋るアルラウネ……植物のガーデンには、お店に招待したいです。レユーサの商売術をみせてやるのです！』

『アスールちゃんとオウルさんは、レユーサの尻尾の魔力に取り憑かれてました。ちょっとこわかったりしたけど……まあ、楽しかったのです』


『ゴーレム？とか、黒いのんと戦ったりもしたのです。レユーサはがんばってたのです。へへん』
『そういえば、トンボちゃんもいました！怪我してなくてよかったのです』
『かっこいいゴーレム、護衛で作って……見たのですけど、ちょっと変になっちゃいましたね』



『……後は、ユリスさん』
『寂しがり屋の人でした！へんな銃？を持ってたし魔道具がすごくきになったし…』

『せっかく綺麗な光色の髪をしてるんだから、もっと手入れすればいいのにって思ったのです』

『最後に見送ってくれたりもしましたね。ちょっと気恥ずかしかったのです。……へへ』



『…思い出してると、ちょっと寂しくなっちゃいます』
『まだ、何か残ってるような気がしますけど……そろそろ頭が痛いのです。さっさと寝るに限るのです』



『明日も頑張りましょう』


*****



……。


明くる日の朝、少女はいつものように店の準備をしていた。
ちょこまかと動き回る人形達に指示をしつつ、自分は掃除。忙しいがもう慣れっこだった。

……そういえば、物置の掃除も随分やっていなかった。
あそこはたまに掃除を入れないとスライムが出てきてしまう。
流石に飛びかかられて水浴びコースはごめんだ。

少女は箒片手に物置へ行き───


──そこで見つけたのは、額縁に丁寧に入れられ置いてある真新しい『絵』だった。
そしてその絵には真っ赤な髪を持ち、大きな翼で青空を駆ける少女の姿。

その特徴が表すのは、龍の末裔レユーサ・クェリフィート。
紛れもなく自分自身だった。

「……あ」

無意識に尻尾を漁る。出てきたのは、海の砂の入った小瓶。
小さな貝殻も混じっていた。

「……」


……思い出した。すべて。
あの夢の、本当に忘れてはならなかったことを。

誰と会ったとか、どんな事があったとか、何をしたとか。

それも充分大事だったけれど。

それよりも、もっともっと大切な『約束』を。






少女は絵を抱え、足早に物置を去っていった。



……箒は残されたままだった。

あらゆる種類の木々がねじれ、取り込まれた一本の大樹が生えている。

『プランタ・タルタリカ・バロメッツ』と書かれた看板があるが特に羊が生えてくる様子はない。

様々な形の葉が作る木漏れ日の下にあるハンモック、ごつごつとした木肌にはめ込まれた丸い窓。




これは『気品』ある、巨大なツリーハウスだ。


・気品ユニオンをします
・ツリーハウスへの来訪、宿泊、生活が可能です
・カントリーな雰囲気のおうちライフが楽しめます
・火気許容状態