ENo.0022　悪運の魔王SFORTUNA

【カピバラちゃんがゆく】

うすぐらい世界の中、迷子のカピバラが一匹。ふんふんと。よく知ったにおいを辿りながら行く。

その匂いがひときわ強くなり。
カピバラは鳴きもせず上を見上げた。

よく知っている顔がカピバラを見下ろす。

■■■■の勇者「ははは。君だれ？僕はゆうしゃ。ゆう…」
カピバラ「？？？」
■■■■の勇者「勇者だっけ？おかしいね。私は誰だったかな？ふふふ」

その顔はふわふわとカピバラに笑いかけた。
が、すぐに冷たく固まる。

■■■■の勇者「…？なんだ？どうした。？？ケダモノよ。いつの間に。」
■■■■の勇者「お前のようなケダモノに構っている時間はないのだ。僕はあれを追撃しなくてはならない。いまやもう何者でもないあの魔王を…」

ふつふつとした憎悪をたぎらせながら、それはかつて幸運の魔王と相打ちに果て、呪いを放った勇者であった。首の継ぎ目がどくどくと脈打っている。力は充分蓄えた。次こそはかの魔王を打ち取れるだろう。そんな自信が漲っている。

しかし。
■■■■の勇者「ああ、だが、僕は…」
■■■■の勇者「ああ、私は」

魔王の顔がにこ、と笑う。

■■■■の勇者「おいで、カピバラちゃん。すぐすむからね」


■■■■の勇者「じゃあそろそろいこうかな！」
■■■■の勇者「あれ？私はどっちに行けばよいかな？？」
■■■■の勇者「ああ、そうこっちだ。僕の運命の魔王」
■■■■の勇者「はやくぅ」
■■■■の勇者「今行くとも。」
■■■■の勇者「今…。僕は誰と話して…」

■■■■の勇者は魔王達の城へと侵攻を開始した。

悪い夢を見たら誰かに話すとよい。