ENo.0096　リィ・シージング

「中央部の制圧が最優先だ、周りは気にするな。そして…動けるものは動いてほしい。」
「……周囲状況はほとんどが民衆を守るために動けないでいる、俺達がやるしかない。」
ざわつく周囲、私はお兄ちゃんについていくと決めているから迷いはなにもない。
「…いくしかない、なー。ほとんど命運託されてるのうちらじゃないか。」
空を見上げたまま、後詰一番の隊長が口を開く。
「戦局ひっくり返せるのはうちらだけ、そんでしなければ待ってるのはジリジリと消耗していくだけ…じゃあいくしかないってことだ。……ついてく根性のあるやつは？うちからも聞くぞ。」
周りの人は顔を知り合いと顔をそれぞれ見合わせ、小さく頷く者、ぐっと拳に力を込める者、様々だった。
「……いいな、後ろは…ないぞ。」
目つきが変わる。各々、武器を構える。
私も手袋を捨てる。後には引けないから。

「…………突撃ィィ！！！」

―――
「……な、なんかすごい勇気あるんですね、皆さん。」
「そりゃあ…ね、曲がりなりにもちゃんと選ばれてる人達だからそういう所で引くような人達じゃないよ。」
「で…その後は？」
「また今度。」
「えー！もうそうやってちまちまちまちままた今度また今度じゃないですか―！」
「しょうがないでしょ、私だって色々と考えなきゃいけない事があるし…。それにまたやってくるんだからね。」
「むぅ……。」
「お楽しみは、また今度ね。」

―――
……見間違いじゃない、この顔、見覚えがある。
名前は…違う。調べ上げてみたが…身なりはこんなに派手ではなかったし、もっとこう…なのですいってた気がする。気がするだけだ。

何があったかはわからない、でも、私は既知を前に何もしないようなたちでもない。
あの塔の後、何が？

有事へ備え、魔術本を携えておこう、これは私の結晶。そして、魔具。
勝手に綴られる、私の分身のようなもの。
燃える事も濡れる事も絶対のない不思議な私の魔術本。

リィの魔術式による倉庫の一角。この世界においては制限がかかっていて入れられる数は限られているが彼女はそれを切り詰めてでも団欒スペースを確保している。
休息はなにより大事かな。とは本人の談。
難しい書物も転がっている…。
※知識極ユニオン