ENo.0097　安藤つくし

「おお〜……でけえ……」
「おっきいお城……！」

甘いものを売ってるお城を探し出し、たどり着いたのはやたらと大きいお城でした。うちの城とはえらい違いです。

「ていうかもしかして、うちの城がやたら狭いだけのかな？ 四畳半の畳敷き台所付き、トイレは外で風呂は無しとか今どきアパートでもありえなくない？ねーねー俺たちもこんな感じのでかい城に引っ越そうよー、俺もうやだよ風呂入るときいちいち銭湯に行くのー」
「痛い痛い痛い、八つ当たりはやめろ痛い」

すーくんのモフモフしたほっぺをモチモチしながら遊んでいたら、引っ張り過ぎてほっぺがのびのびになったすーくんが悲鳴をあげました。そして、すーくんの猛抗議がまた始まってしまいました。

「だいたい！ 売れない変なもんしか作らないお前が悪いんだろうが！ 呪いのぬいぐるみとか！ だから金が貯まんなくて引っ越せねえんだよ！」
「あっすーくん酷い！ あれは呪いのぬいぐるみなんかじゃなくて、可愛いクマチャンぬいぐるみさんなんだって何度言ったら！ 顔だってすーくんに似せて作ったんだよ！？」
「きええええそれ以上言うな！ おぞましい！」

クマチャンの愛らしさに関する、すーくんと俺の意見は平行線のままです。確かに、あれを呪物として売り出したら何故か途端に売り上げが伸びたんだけど！

すーくんは、モフッ！モフッ！と激しく地団駄を踏みながら、叫びました。

「も〜っ俺もこんな変なヤツとじゃなくて、可愛い女の子と城の経営がしたかった！ そんで毎日甘〜い美味しいお菓子を焼いてもらって、毛づくろいとかもしてもらって、一緒にお風呂に入ったり広いベッドで寝たりして楽しい城生活を送りたかった！」
「あーっすーくんちょっと！ それはホントに酷い！ 俺こんなに可愛いのに！ まあ兄さんのほうがもっと可愛らしいのは間違いないんだけど！！！」
「お前ホンマそういうとこやぞ！！！！」

他人の城の前でギャイギャイすーくんと言い争いをしていると、そのうち城の門がすすす……と遠慮がちに開いた。遠慮がちにと言うか、恐る恐るという感じだった。

「あの……どちらさま、でしょうか」

取っ組み合って喧嘩をしていた俺とすーくんは、ピタリとつかみ合いをやめてそちらを見た。

わずかに開いた門の隙間から俺たちを見ていたのは、女の子だった。

あらゆる種類の木々がねじれ、取り込まれた一本の大樹が生えている。

『プランタ・タルタリカ・バロメッツ』と書かれた看板があるが特に羊が生えてくる様子はない。

様々な形の葉が作る木漏れ日の下にあるハンモック、ごつごつとした木肌にはめ込まれた丸い窓。




これは『気品』ある、巨大なツリーハウスだ。


・気品ユニオンをします
・ツリーハウスへの来訪、宿泊、生活が可能です
・カントリーな雰囲気のおうちライフが楽しめます
・火気許容状態