ENo.0040　Henyey track

――村一つない場所に、ヘニエイ・トラックは立っている。
人（あるいは原住民）とも呼ぶべきものは廃墟と化した家の中にいるのか。あるいは魔王城と呼ばれる区域の中にいる者も存在するのかもしれない。
管理者。現時点で見える『人』は『勇者』以外におりません。
辺り一面焦土か。我々も関与しているとはいえ、通常のアンドロイドでは壊滅していただろうな。
……はい。
一度それらは復活するそうだが、それまでは焦土を練り歩くしかあるまい。
管理者……
なんだ？
私は何ですか？私とは何ですか？この力は、ああ……
……飢えか。はは……前言撤回か。一度学習した感情をリセットするかも視野に入れねばならんか。一度感情のリンクを切れ、ヘニエイ・トラック。
はい、すみま、せん……。

ヘニエイ・トラックは情緒が安定してから通信を切った。損傷やパーツ破壊が感情を大きく揺さぶることになろうとはそれ自身み思わなかったのだろう。

…………
……
…


さて、ひと段落着く前にヘニエイ・トラックについての話をするとしよう。
勇者と魔王のおとぎ話――そんな中にはふさわしくない姿。
丁度今話しているカイリと呼ばれるものが話すようなイメージの。
アンドロイドというには少しだけポンコツな、それでいて星を象ったそれらの持ち主。


その技術は元々他の惑星から来たものだった。惑星の資源が死滅し、他の星々の技術を糧とする方針を取ったものども――ここでは侵略者と呼ぶが。
彼らは貪欲で、しかして愚かであった。自分の星の技術が死滅したのも、そのせいだというのに。血迷って、生存のために、侵略の道を選んだのだ。……侵略戦争によくある話だ。

……。続きは、また後で書くか。