ENo.0028　電算の派遣魔王をする有澤

「魔王やってください。」

会社帰りの出来事だ。
この科学技術の最先端のような世界において、いきなり現れたステレオタイプな外見の悪魔的なサムシングは僕にそんなことを言ってきた。
無理やり手近な喫茶店に連れ込まれ、書類による説明を受けたがどうも普通のファンタジーとは逆にまっとうな経済を構築していた魔王側に暴力で勇者がしばくという、人類の恥みたいな話になっているらしい、
とても腹立たしい、がよその世界の話なのでほおっておくべきだと思うし、時間もない。
そもそもまっとうな経済活動であれば報酬を用意するべきである。

「時間はこの時間軸に戻しますし、無理そうなら普通にお返しします。
お礼もちゃんとしますし、おねがいします。」

顔に出ていたのだろうか、いやでもまぁめんどくさいし…
そういいながら書類に再び目を通す、なんだかんだ言って相手にしてしまう、このような話に対しても形式だけでもまともな対応を取ろうとしてしまうのは僕の悪癖だろうか。
ふと、ひとつの単語、『デバステイターの光』、デバイステイターとやらには聞き覚えがあった。
いつぞやの、残存領域での出来事が浮かぶ。　少しばかりの小骨の突っかかりが僕の心に刺さった。
何か、関係があるのだろうか。

「急に真剣な顔してどうしたんですか。」

目の前の悪魔の声で、思考から引き戻される。
そして
『悪魔っていうなら、嘘はなし。　ほんとにリスクなしでいいんだね。』
そう、問う。　こちらでの時間も消費せず、問題なくこの小骨をとれるなら、まぁ、乗ってもいい気はした。
本来なら、こんな選択はしなかっただろうけど、あの世界には思うことがいくつかあったから。
悪魔の契約に乗ることにしたのだ。

『魔王的なアバターを用意するとは聞いてたけどなんで女だし露出多いんだよ。』
僕はつらくなって両手で顔を覆った。