ENo.0160　Anny=Tolle

　男と女が慌ただしく店舗や奥を行き来して大幅な改造を行っている。直前になって思い立ち始めたものだから、間に合うかもわからない。
　新しく棚を用意して商品をそちらに陳列し直したり、護衛達の配置を変更したり、店内の内装自体もガラッと変えている。

「なんで姉さんはそう突拍子もないこと思いつくンスか！これ間に合うンスか！？」
「お前が口ばっかり動かさないで手ぇ動かしてりゃあ終わりますよ阿呆！後姉と呼ぶなと言ってるでしょうが殴りますよ！」

　すみませんッス！と男が大声で詫びながら荷物を必死に移動させる。

　こんな調子でバタバタしているが、なんとか間に合いそうな様子だ。

「今度からもっと早く言ってくださいッス！」
「お前も賛成したんですから同罪ですよ！」

　ギャアギャア大声で温い喧嘩のような言い合いをしながら、二人はギリギリまでバタバタし続けていた。




「次回も多分こんな調子なので頑張りやがってください」
「なんで他人事なンスか…」

　儲けが出ても出なくても、きっと閉店後にそんな言葉を交わしながらお互いを労うことだろう。

ペルレイシスとトトアを生み出した本来参戦すべき魔王の根城。

領域には丁寧に整えられた色とりどりの薔薇園とその中央に鎮座する巨大な蔓薔薇の蕾。
本来は真っ白だっただろう城壁には蔦がびっしりと張り巡らされて深緑に染まっている。

魔王が出てくることはほぼなく、城のどこかにあるプライベートルームに引きこもっている――はずだったが最近は薔薇園で薔薇の手入れをしている姿が度々目撃されているようだ。