ENo.0128　名も無き死者の王

　何もわからないままここでユニットの貸出をしたり勇者に死を問いたりしているうちにわかったことがある。委員会の攻撃を受け主君を失い、飢餓から勇者へと堕ちたアンデライトの猫たち。この世界での勇者とは物取りやゴミあさりに相当する語なのだ。その肩書の持つ本来の意味は失せ形骸化してしまったのだろう。あるいは最初からそのような意味だったのか？　この世の成り立ちに詳しくないロンディーネにはそれはわからない。

　だが、少なくともロンディーネの知っている勇者とはかけ離れた像だった。ロンディーネは勇者を知っていた。ずっと近くに、しかし遠くに居た敬愛するべき彼ら……けれどロンディーネの中でまたそれは堕ちてしまっていた。どれほど近くにいても、決して触れることができないと知ったとき、その感情は憎悪に変わってしまったのだろうか。勇者とはただただ残酷な存在だった。影の者は、光の者とはともに立てないのだから。

　今のロンディーネは紛いなりにも魔王と呼ばれていた。魔王の望むこと、魔王のするべきこと、魔王という名の背負うもの、それは果たしてなんなのだろうか。

真っ暗な空間。
死と生のあわいにある場所。猶予の領域とも呼ばれる。
生きた何かが来ると正気がグニョ～ンと引き伸ばされて
あたまがおかしくなってしぬ。
なんか死んでるか狂ってるかしている魔王なら大丈夫。

「頑張ってこの世界から生のシステムを取り除きましょうね」

周囲には誰もいない。