ENo.0079　ロゼ・クレープス

「……ウィルさん？」

フリフリの女装をしていたため判別に時間を要したが、
自分の知人であることを認めると、魔女は箒の上から魔法少女(?)に声をかけた。

「セイラじゃないか。
　……あんたも召喚されたクチか？」

「いえ、私は調査で。
　恥ずかしながら、路銀が尽きてしまって。
　そこをアニーさんから勧誘されまして」

「…………そうか」

「……？
　ともかく、同じくウィッチ扱いということのようですし。
　よろしくお願いいたしますね」

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「……わざとなんだろう？」

セイラと話して別れた後、アニーを呼び止めたウィル。
アニーの方はほとんど何も身につけないサキュバス衣装だ。

「なーにが？」

「セイラのことだ」

「……そーね。狙ってやったのは認める。
　でーもー。やり方に関してあの事務所にどうこう言われる筋合いは無いけど？」

両手をひらひらさせ、けろりとした表情で。
やり方といえば、セイラの所属する調査人事務所の護衛剣士――、ナツのことだろう。
行き倒れた彼女を、所長のニコルが足元を見た条件で雇ったのだった。

「ああ、手段を選ばないのはお互い様だろうな。
　ご丁寧にその内訳まで同じときた。
　……この場にニコルがいなくてよかったよ」

「そ。別に負ける気はしてないけど？」

「そうじゃない、諍いがあれば制圧するのが僕の役目だからだ。
　ここにいる条件もそういう契約だ。
　お前がノリノリでやってる娼館まがいの仕事には、一切協力する気はない」

紫色の刀身をした抜き身の野太刀を向ける。
ちゃき、と鍔鳴りがした。

「あらら、ふざけた格好で身持ちの固いこと」

「当然だ。人選を謝ったと思ったならいつでも送り返せよ」

「はーいはい。
　ま、いいんじゃない？ 一人くらいがそうでも」

「……そうかよ。別に、後悔しないならいい」