ENo.0090　にんじん紅茶の魔王『ラパン』

　（掘っ立て小屋の小さな祭壇で、ウサギが不可思議に筆を振るっている）
　（慎ましく正しく、スケールの小さい字体で文が綴られている）
　（『穴ぐらウサギの日誌』）

　私の間違いでなければ、懐かし匂いの方はもう少しアンティークの匂いがしましたが。お孫さんか誰かでしょうか？
　ああしかし、店の構築がとてもむつかしいです。赤字ですし、この先の展望を考えると不安もややありき。ともあれ、先行投資と考えれば肚も落ち着く次第です。メルサリア様の資金援助はありがたいのですが――もう少し、だなんてわがままですね。
　商いは元の世界でもさんざんやってきたというのに、がらりと景色が変わるのです。商売も政治もまた戦争のようなものと妻も言っておりましたが、一緒くたにはできない部分もあります。例えば

　例えば、そうですね。例えば。

　思いつきません。人を笑顔にするのも戦争にはありますし。
　どれもこれも手段であり、目的は一つになるのでしょうか。
　豊かなものをもたらす、という目的です。


　ところでこの透けたお召し物らしきものはなんでしょう。
　
　（掘っ立て小屋の近く、ウサギが寝転んでいる）

　祈りの小屋。
　ここに立ち寄るのは、信仰も種族も問わず個々人の自由。
　ただ壇があるだけの簡素な構造の小屋。