ENo.0052　エッセイスト

　なんだか知らない間に、知らない魔物が大量に雇用されていた。

　というか、自分の知った顔が幹部以外誰も居なくなっていた。

　幹部に聞いた所、全員辞めていったらしい。何故そんな事になったのかを聞くと、「近頃の貴方が全く魔王としての活動をしなくなり、あまつさえエッセイで食べていく等と宣言したからです」と言われた。まぁ、それは確かに私のせいだとも言えなくもない。辞められても仕方なかったとも、言えなくもないかも知れない。

　だが、それでも新たに訪れる魔物達も居るという事は、つまり私のやり方に理解を示し、敬服する者も居たということでは！？と興奮気味に幹部に話した所、彼等は純粋にお金目当てで来ている魔物達であり、定時が来たら絶対に帰るし、その日の日当が先払いされなければ城には来ないらしい。

　魔王と魔物の契約といえば即ち支配と服従であるというイメージを抱えていた私はひどく驚いてしまったものだが、幹部が言うには、今どきの魔物はこのようなスタイルが一般的で、どこの城も同じような契約形式をとっているのだという。私がイメージしていたような契約スタイルは古臭く、最近の魔物はよりシビアなのだとか。
　
　魔物の価値観も日進月歩、魔王軍内部での地位向上や魔王の野望に生きがいを感じるライフスタイルは過去のものとなり、魔物たちは魔王城以外に己の生きがいを見出すようになった。

　今時古臭い価値観で服従を求めるのは「ブラック魔王城」とされるのだという。

　ブラック魔王城…………それはそれで、魔王的にはなにやら強そうなのでは？と思ったのだが、そういったつぶやきを聞いていたクラウドが後日辞めていったところを見ると、ブラック魔王城の噂が立てば日雇い魔物の登用すらままならなくなりそうである。切実。

　それと既知の魔物が全員居なくなった件については、どうやら同時期に侵攻を始めた他の魔王達も、基本的には家臣の居ないゼロ状態からのスタートであったらしい。いやぁなんだ他の魔王共も人望がないのだなぁとしたり顔で頷いていた私を、幹部は「魔物が辞めていった事に気付かないような方が言うことではありませんね」などと言いながら何時ものように冷たい目で見ていた。

　というか我が魔王城が他の魔王達より２時間遅れで参戦することになったのは、そのせいだったらしい。

　ごめんて。