第1回目 午前2時の雇われ指揮者『三原辰乃』
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侵攻速度*3の訓練をしました
今回作成の侵攻速度*3が10上昇した
侵攻速度*3の訓練をしました今回作成の侵攻速度*3が11上昇した
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侵攻速度*3の訓練をしました今回作成の侵攻速度*3が25上昇した
侵攻速度*3の訓練をしました経験値が足りない
侵攻速度の訓練をしました経験値が足りない
あなたのアラームの罠を作製した!!
あなたの水牢の罠を作製した!!
あなたの水路を作製した!!
あなたのクラウドを作製した!!
あなたの水牢の罠を作製した!!
あなたの尖塔を作製した!!
あなたのアラームの罠を作製した!!
あなたのビーストを作製した!!
あなたの水路を作製した!!
あなたのクラウドを作製した!!
あなたの尖塔を作製した!!
あなたのビーストを作製した!!
冷たいアルペジオを作製した!!
『指揮者』三原辰野は四畳半の魔王城で目覚めの時を待っていた
ここでお金を稼ぐことがあなたの使命だ
ただ今日だけは、嵐の日々が来るまでの、ひと時の休息を味わっていた……
◆日記
ゼロが墜ちていく。
目を開こうが閉じようが変わりばえしない暗闇の中を、目も眩むようなまばゆさできらきらと数字の『0』が零れてゆく。
美しい。
美しいけれど、どこか退屈な光景だ。
無数のゼロは、真っ直ぐ下へと向かって回るでもなく揺らめくでもなく規則正しく落ちていくままで、いくら眺めていても何の変化もない。
こんなにも眩しいのに、指先で触れようとしてもわたしの体が緑色を帯びたその光に照らされることもなかった。まるで、透明人間にでもなったかのように。
これは夢なのだ、と、頭の中でぼんやりと分かっている。
この光景を、わたしは今までに何度も見たことがあって、けれど目覚めている時には忘れている。
繰り返し、繰り返し見ている夢だ。
繰り返し、繰り返し忘却している夢だ。
この夢に、何か意味があるのではないかと思っている。
わたしの中の感情や記憶を反映したものなのか、それとも未来かなにかを暗示しているのか。
なんともあいまいでぼんやりした感覚だけれど。
ただ、自分の姿かたちさえ失って、こうしてゼロの群れのただなかに置かれた時、この光景の向こうに待っているものがあるという予感があった。
だからこうして、触れた手の感触がなくても、闇の中でゼロへ向けて手を伸ばす。
「意味などない」
その手が乱暴に掴まれる。
相変わらず煌めく数字の羅列以外には何も見えないし、体感もはっきりとはしないけれど、掴まれたのはなぜか感じた。だれかの体温に、わたしはその部分だけ、世界との境目を取り戻す。
否定の声は男のものだった。
私の手を掴んだその人であろう、低く押し殺した声もまた、わたしは何度もこの夢の中で耳にしたことがあった。
いつも聞いている声。いつも聞いている抑揚。いつも聞いているリズム。
その声を耳にした途端に、掴まれた手以外の場所がいっそう甘くぼやけて、暗がりの中に拡散していく。
舌先ではなくて、からだ全体でその甘さを感じている。
ひどく心地がいい。
「何も、見る必要はない」
その通りだ。
わたしには果たさねばならない仕事があって、本当ならこんなところでのんびりと数字を眺めていられるような身分ではない。
声は何よりも気持ちよく、それを教えてくれている。仕事の中身ではなくて、仕事への義務感を呼び起こしてくれる。
それでじゅうぶんだった。目覚めている時のわたしがこの夢のことを忘れているように、夢の中のわたしは現実のことを忘れているのだから、あとは目覚めるだけでいい。
忘れてしまっても、こうして甘く浸透した声は、それが教えてくれた気持ちは、すっかり消え去ったりはしないだろう。
「目を閉じて、ゆっくりと息を吸え」
ひんやりと冷たい気さえするその声音とは反対に、わたしは熱を持ってゆく。
吹き込まれる吐息に揺すられて、じわじわと昂っていく。
からだはもはやどこへ行ったか分からなくて、闇の中に蕩けてしまっていた。
耳で聞いているわけではなくて、声に浸っているようになっているから、ただわたしの内側にこころよい声が響いて、それがひどく、甘い。
濃厚なクリームの灼けるような甘さではなく、シャーベットの冷たい甘さでもなく、ずっと、いつまでも、永久にこの声だけを聞いていたいと感じるような、優しくて柔らかい甘味。
それが正体を失くしたわたしの中に満ち満ちて、恍惚とさせられる。
声が消えて、暗闇に残滓がうっすらと残り、消失していくその時間さえいとおしい。
――完全に声が消えてしまったあとは、一転して寂しさと物足りなさで凍えそうになる。
冷たく硬く震えて、沈黙が怖くて、からだはどこにもなくて、気が狂ってしまうのだ。ふたたびその声を聞くためならば、何だって差し出してしまいそうなぐらいに。
「さあ――よく聞くんだ」
果たして声は与えられ、わたしはまたしても満たされる。
からだがないから頷くことができなかったけれど、もしまだ体の感覚が残っていたら、バカみたいに何度も首を振っていたことだろう。
それほどに、恋しい声。いや、恋しいというには、あまりにも支配的な、優しいのにひどく飢(かつ)えを抱かせる声。
なのに、彼の声が消えてゆくその余韻を覆って潰して、わずかに音が聞こえてくる。
彼の声を識る前であれば、あるいはわたしはそのいくつかの音を美しいと感じたかも知れないけれど、今はただ、邪魔なだけだ。
でも、やめろ、ということもできなかった。わたしにはもう唇も喉もなかったし、何より彼が聞けと言っていたから。
「――理解しているか? ここを。そして、お前自身を」
そうだ。わたしは。
そして奔流。
ゼロはもう見えない。
◇ ◆ ◇
痛い――
鼻先に猛烈な痛みを感じて、三原辰乃(みはら・たつの)は思い切りそのままの悲鳴を上げると、自分の鼻先に手をやった。
しかしわさっと手に触れたのは、低くて丸くて小さな自分の鼻ではなくて、人間の髪の毛でもない、なにか動物の、滑らかな毛皮であった。
それはすぐさま身を振るって辰乃から逃れると、転げるようにして少し離れた足元、磨かれた石の敷き詰められた床の上へ着地する。
焦げ茶色の毛並みをした、形容しがたい生き物だ。体つきはモルモットのような気もするが、それよりは大型で、顔も大分違う。
少なくとも愛玩動物という感じではなくて、動物園にはいそうだけれど、何の動物かは分からない。なんだか原始的なつくりをしていて、脚は短い。歯はあるため、噛まれれば当然痛い。
「この――ネズミッ!」
「ケープハイラックスだって言ってるでしょうが! このポンコツ{指揮者}!」
辰乃の罵声に応えたのは、目の前の、たった今辰乃の鼻を齧った哺乳類――ケープハイラックスとやら――ではなかった。
しかし、辰乃が眉根を寄せてずり落ちた眼鏡の位置を直し、視線を向けた先にいたのは、やはりケープハイラックスであった。別の。
「いつまでも気持ちよさそうに眠りこけてらっしゃるから、間に合うように起こして差し上げたんでしょ」
改めて、足元の個体が声を上げる。辰乃は呻き声を上げて、背もたれに体重を預けた。
「起こし方ってものがあるって?」
「そんなに贅沢言っていられる立場じゃないでしょ、あんた」
「自覚ってものが足らないよね」
「感謝して欲しいぐらいだ」
「それに、叩こうが舐めようが全然目を覚まさなかったのはあんたなんだから」
成る程、鼻が妙にかぴかぴしている気がするのはそのせいか。
辰乃が今度こそ自分の鼻を撫でて労わる間にも、次から次へと飛び跳ねるように声は移っていく。
辺りを見回せば、辰乃が座る玉座を取り囲むように、ケープハイラックスの群れがひしめいているのが見えた。数える気も失せるようなぐらいいる。いや、一回だけカウントしたことがあって、確かおおよそ八十匹ぐらいだった。
つまり今、八十匹にも及ぶ、見慣れない、しかも喋る哺乳類の群れに囲まれている。なかなか頭の痛くなる光景だ。その上、物理的にも頭は重い。
「――ああっ、分かりました、分かりましたよ。分かりましたから、そろそろ黙ってくれるかなぁ!」
目の前にずれてきた大仰な王冠を持ち上げてかぶり直し、白いファーのついた豪奢な真っ赤なマントを引きずりながら、辰乃は玉座を立ち上がる。
そして、寝起きでだるい手を持ち上げて、白い指揮棒を振るった。
ぴたりと劇的に声は収まる。辰乃は安堵の息を吐いて、顔を俯かせる。
しかし、彼らの視線はすべて、いまだこちらへ注がれているのだった。
いや、彼ら、と称していいのかは分からない。同じ意志でもって統率されているにしても、この動物たちの行動は不気味に一致し過ぎている。さっきから聞こえている声も、大小さまざまな個体から別々に上がっているのに、全てがまったく同じ。たった一人の少年のものだ。少年であるように思う。
少年がケープハイラックスを操っている。さらに言えば、その言葉から通常想像される意味とは、実情は少し違う。
彼らは少年そのものだ。なにか魔法でもって少年のコントロールを受けているわけではない。彼ら一頭一頭が一人の少年であり、意識はそれだけに塗り潰されている。少年の意識が分割されて、絶え間なく彼らの間で行き来している。
であるから、八十頭を目の前にしていても、その実ひとりと向き合っているに過ぎない。
辰乃もそれは分かっているが、視覚的な圧からは逃れられないのだった。
「――それでは、どうなさるんですか、指揮者(コンダクター)?」
焦れたような問いかけに、その言葉に、辰乃は自分の首に枷を嵌められたような気分になって、指揮棒を持っていない手の方で首元を確かめた。
けれど、そこには自分の首があるだけだった。細い女の首だ。何度確かめても変わることはない。
息を吸って、ゆっくりと周囲を見回す。
薄暗くだだっ広く天井の高い部屋。加工され磨き上げられた美しい石が敷き詰められた床は、たかだか小動物が八十匹いようが隠れ切ることはない。
辰乃の据わる豪華な玉座は、一段一段が薄っぺらい小さな階段の上にある、小高いスペースに鎮座していた。背後を振り返れば、辰乃の背よりも高い背もたれが見える。紋章などはないが、いっちょ前に豪華な玉座。
――文句のつけようない魔王の間だ。
思ったとたんに憂鬱な気持ちが増して、辰乃は立ったままだらりと両手を下げて下を向いた。王冠がずり落ちてくるのを慌てて押さえると、
「お客様を出迎える準備をしよっか……いい加減、開場だ。我が楽団。『揺蕩する影法師』たち」
そう言って、指揮棒を弱々しく振り上げた。
目を開こうが閉じようが変わりばえしない暗闇の中を、目も眩むようなまばゆさできらきらと数字の『0』が零れてゆく。
美しい。
美しいけれど、どこか退屈な光景だ。
無数のゼロは、真っ直ぐ下へと向かって回るでもなく揺らめくでもなく規則正しく落ちていくままで、いくら眺めていても何の変化もない。
こんなにも眩しいのに、指先で触れようとしてもわたしの体が緑色を帯びたその光に照らされることもなかった。まるで、透明人間にでもなったかのように。
これは夢なのだ、と、頭の中でぼんやりと分かっている。
この光景を、わたしは今までに何度も見たことがあって、けれど目覚めている時には忘れている。
繰り返し、繰り返し見ている夢だ。
繰り返し、繰り返し忘却している夢だ。
この夢に、何か意味があるのではないかと思っている。
わたしの中の感情や記憶を反映したものなのか、それとも未来かなにかを暗示しているのか。
なんともあいまいでぼんやりした感覚だけれど。
ただ、自分の姿かたちさえ失って、こうしてゼロの群れのただなかに置かれた時、この光景の向こうに待っているものがあるという予感があった。
だからこうして、触れた手の感触がなくても、闇の中でゼロへ向けて手を伸ばす。
「意味などない」
その手が乱暴に掴まれる。
相変わらず煌めく数字の羅列以外には何も見えないし、体感もはっきりとはしないけれど、掴まれたのはなぜか感じた。だれかの体温に、わたしはその部分だけ、世界との境目を取り戻す。
否定の声は男のものだった。
私の手を掴んだその人であろう、低く押し殺した声もまた、わたしは何度もこの夢の中で耳にしたことがあった。
いつも聞いている声。いつも聞いている抑揚。いつも聞いているリズム。
その声を耳にした途端に、掴まれた手以外の場所がいっそう甘くぼやけて、暗がりの中に拡散していく。
舌先ではなくて、からだ全体でその甘さを感じている。
ひどく心地がいい。
「何も、見る必要はない」
その通りだ。
わたしには果たさねばならない仕事があって、本当ならこんなところでのんびりと数字を眺めていられるような身分ではない。
声は何よりも気持ちよく、それを教えてくれている。仕事の中身ではなくて、仕事への義務感を呼び起こしてくれる。
それでじゅうぶんだった。目覚めている時のわたしがこの夢のことを忘れているように、夢の中のわたしは現実のことを忘れているのだから、あとは目覚めるだけでいい。
忘れてしまっても、こうして甘く浸透した声は、それが教えてくれた気持ちは、すっかり消え去ったりはしないだろう。
「目を閉じて、ゆっくりと息を吸え」
ひんやりと冷たい気さえするその声音とは反対に、わたしは熱を持ってゆく。
吹き込まれる吐息に揺すられて、じわじわと昂っていく。
からだはもはやどこへ行ったか分からなくて、闇の中に蕩けてしまっていた。
耳で聞いているわけではなくて、声に浸っているようになっているから、ただわたしの内側にこころよい声が響いて、それがひどく、甘い。
濃厚なクリームの灼けるような甘さではなく、シャーベットの冷たい甘さでもなく、ずっと、いつまでも、永久にこの声だけを聞いていたいと感じるような、優しくて柔らかい甘味。
それが正体を失くしたわたしの中に満ち満ちて、恍惚とさせられる。
声が消えて、暗闇に残滓がうっすらと残り、消失していくその時間さえいとおしい。
――完全に声が消えてしまったあとは、一転して寂しさと物足りなさで凍えそうになる。
冷たく硬く震えて、沈黙が怖くて、からだはどこにもなくて、気が狂ってしまうのだ。ふたたびその声を聞くためならば、何だって差し出してしまいそうなぐらいに。
「さあ――よく聞くんだ」
果たして声は与えられ、わたしはまたしても満たされる。
からだがないから頷くことができなかったけれど、もしまだ体の感覚が残っていたら、バカみたいに何度も首を振っていたことだろう。
それほどに、恋しい声。いや、恋しいというには、あまりにも支配的な、優しいのにひどく飢(かつ)えを抱かせる声。
なのに、彼の声が消えてゆくその余韻を覆って潰して、わずかに音が聞こえてくる。
彼の声を識る前であれば、あるいはわたしはそのいくつかの音を美しいと感じたかも知れないけれど、今はただ、邪魔なだけだ。
でも、やめろ、ということもできなかった。わたしにはもう唇も喉もなかったし、何より彼が聞けと言っていたから。
「――理解しているか? ここを。そして、お前自身を」
そうだ。わたしは。
そして奔流。
ゼロはもう見えない。
◇ ◆ ◇
痛い――
鼻先に猛烈な痛みを感じて、三原辰乃(みはら・たつの)は思い切りそのままの悲鳴を上げると、自分の鼻先に手をやった。
しかしわさっと手に触れたのは、低くて丸くて小さな自分の鼻ではなくて、人間の髪の毛でもない、なにか動物の、滑らかな毛皮であった。
それはすぐさま身を振るって辰乃から逃れると、転げるようにして少し離れた足元、磨かれた石の敷き詰められた床の上へ着地する。
焦げ茶色の毛並みをした、形容しがたい生き物だ。体つきはモルモットのような気もするが、それよりは大型で、顔も大分違う。
少なくとも愛玩動物という感じではなくて、動物園にはいそうだけれど、何の動物かは分からない。なんだか原始的なつくりをしていて、脚は短い。歯はあるため、噛まれれば当然痛い。
「この――ネズミッ!」
「ケープハイラックスだって言ってるでしょうが! このポンコツ{指揮者}!」
辰乃の罵声に応えたのは、目の前の、たった今辰乃の鼻を齧った哺乳類――ケープハイラックスとやら――ではなかった。
しかし、辰乃が眉根を寄せてずり落ちた眼鏡の位置を直し、視線を向けた先にいたのは、やはりケープハイラックスであった。別の。
「いつまでも気持ちよさそうに眠りこけてらっしゃるから、間に合うように起こして差し上げたんでしょ」
改めて、足元の個体が声を上げる。辰乃は呻き声を上げて、背もたれに体重を預けた。
「起こし方ってものがあるって?」
「そんなに贅沢言っていられる立場じゃないでしょ、あんた」
「自覚ってものが足らないよね」
「感謝して欲しいぐらいだ」
「それに、叩こうが舐めようが全然目を覚まさなかったのはあんたなんだから」
成る程、鼻が妙にかぴかぴしている気がするのはそのせいか。
辰乃が今度こそ自分の鼻を撫でて労わる間にも、次から次へと飛び跳ねるように声は移っていく。
辺りを見回せば、辰乃が座る玉座を取り囲むように、ケープハイラックスの群れがひしめいているのが見えた。数える気も失せるようなぐらいいる。いや、一回だけカウントしたことがあって、確かおおよそ八十匹ぐらいだった。
つまり今、八十匹にも及ぶ、見慣れない、しかも喋る哺乳類の群れに囲まれている。なかなか頭の痛くなる光景だ。その上、物理的にも頭は重い。
「――ああっ、分かりました、分かりましたよ。分かりましたから、そろそろ黙ってくれるかなぁ!」
目の前にずれてきた大仰な王冠を持ち上げてかぶり直し、白いファーのついた豪奢な真っ赤なマントを引きずりながら、辰乃は玉座を立ち上がる。
そして、寝起きでだるい手を持ち上げて、白い指揮棒を振るった。
ぴたりと劇的に声は収まる。辰乃は安堵の息を吐いて、顔を俯かせる。
しかし、彼らの視線はすべて、いまだこちらへ注がれているのだった。
いや、彼ら、と称していいのかは分からない。同じ意志でもって統率されているにしても、この動物たちの行動は不気味に一致し過ぎている。さっきから聞こえている声も、大小さまざまな個体から別々に上がっているのに、全てがまったく同じ。たった一人の少年のものだ。少年であるように思う。
少年がケープハイラックスを操っている。さらに言えば、その言葉から通常想像される意味とは、実情は少し違う。
彼らは少年そのものだ。なにか魔法でもって少年のコントロールを受けているわけではない。彼ら一頭一頭が一人の少年であり、意識はそれだけに塗り潰されている。少年の意識が分割されて、絶え間なく彼らの間で行き来している。
であるから、八十頭を目の前にしていても、その実ひとりと向き合っているに過ぎない。
辰乃もそれは分かっているが、視覚的な圧からは逃れられないのだった。
「――それでは、どうなさるんですか、指揮者(コンダクター)?」
焦れたような問いかけに、その言葉に、辰乃は自分の首に枷を嵌められたような気分になって、指揮棒を持っていない手の方で首元を確かめた。
けれど、そこには自分の首があるだけだった。細い女の首だ。何度確かめても変わることはない。
息を吸って、ゆっくりと周囲を見回す。
薄暗くだだっ広く天井の高い部屋。加工され磨き上げられた美しい石が敷き詰められた床は、たかだか小動物が八十匹いようが隠れ切ることはない。
辰乃の据わる豪華な玉座は、一段一段が薄っぺらい小さな階段の上にある、小高いスペースに鎮座していた。背後を振り返れば、辰乃の背よりも高い背もたれが見える。紋章などはないが、いっちょ前に豪華な玉座。
――文句のつけようない魔王の間だ。
思ったとたんに憂鬱な気持ちが増して、辰乃は立ったままだらりと両手を下げて下を向いた。王冠がずり落ちてくるのを慌てて押さえると、
「お客様を出迎える準備をしよっか……いい加減、開場だ。我が楽団。『揺蕩する影法師』たち」
そう言って、指揮棒を弱々しく振り上げた。
NEWS
《コズミックスフィア》を訪れたあなたを待っていたのはあまりにも手荒い天球使からの仕打ちだった
天球使が飛び交う空には魔王たちの悲鳴が響く
空から追い立てられ、あなたは物陰に隠れた
捕まってはいけない。天球使に捕まれば――
浄化を選ばない限り、拘束されつづけるだろう
??????
「やぁやぁ、やってきましたね、魔王たち。ここでは、ルールッに従ってもらいますよ」
??????
「申し遅れました、わたくし、『天球使』の『フォートリエ』」
天球使『フォートリエ』
「はて、前出会ったような、そうでないような……」
天球使『フォートリエ』
「ともかく、浄化を……キュアの魔法を使うのです。そうすれば、あなたの罪は少しは軽くなる……」
??????
「貴様ら魔王のせいで、我々の敷いた秩序が破壊されようとしている」
??????
「わたしは『天球使』の『リヴァリエ』。覚えておけ」
天球使『リヴァリエ』
「貴様ら魔王はどうせ『ゼロのレガリア』を探しているのだろう」
天球使『リヴァリエ』
「アレはただのお伽噺に過ぎない……ありもしない希望にすがるのはよせ」
?????からのメッセージ
「おはよう、魔王の諸君(眼鏡クイッ)」
?????からのメッセージ
「君たちに頼みたいことがある(眼鏡クイッ)2度目になるのかもしれないが(眼鏡クイッ)」
?????からのメッセージ
「(眼鏡クイッ)単刀直入に言おう(眼鏡クイッ)『天球統率者』を破壊してほしい(眼鏡クイッ)」
?????からのメッセージ
「報酬は、『ゼロのレガリア』へ到達できるヒントだ(眼鏡クイッ)前払いとして、ある程度情報を渡しておこう(眼鏡クイッ)」
?????からのメッセージ
「(眼鏡クイッ)『ゼロのレガリア』を手にいれた者が、すでに存在している(眼鏡クイッ)そう、次は……君たちの番だ(眼鏡クイッ)」
??????
「お前魔王か!? 魔王なんだな!? 潰す!」
??????
「いや、この『魔王探知機~まおたん~』が反応しない……よかった~~~俺は勇者『テオ』!『テオ=レオン』だ!」
勇者『テオ』
「俺は魔王を倒すために、この《コズミックスフィア》に来た! なぜなら、魔王がいっぱいいるからだ!」
勇者『テオ』
「お前が魔王じゃなくてよかったぜ! じゃな! また!」
◆訓練
◆作製
◆レガリア決定
幻影跳梁 に決定!!
◆心魂結束
◆対象指定
対象指定……フリー
ユニオン活動
【素人楽団】の活動記録
言うて初心者で、音楽とかよく分かんないんすよね
経験値の訓練をしました
経験値が1上昇した
経験値の訓練をしました経験値が1上昇した
経験値の訓練をしました経験値が1上昇した
経験値の訓練をしました経験値が1上昇した
経験値の訓練をしました経験値が1上昇した
メッセージ
◆戦闘結果
戦闘結果は*こちら*
◆ダイジェスト結果
精算
売上高 9
攻撃戦果収入39.97
支援戦果収入31.76
防衛戦果収入16
捕虜交換 160
戦闘報酬247
合計現金収入256
獲得レートポイント256
【!】摘発 あなたのダンジョンは摘発されました……
収入 3100moneyがかき集められました
【!】経費 7522moneyを消費しました
【!】破産 装備ユニットが売却されます……
◆あなたのアラームの罠 は破壊されてしまった……
◆あなたの水牢の罠 は破壊されてしまった……
◆あなたの水路 は破壊されてしまった……
◆経験値が15増加しました……
◆『回転する火の目の勇者』 は コールドウェイブ を習得したようだ……
攻撃戦果収入39.97
支援戦果収入31.76
防衛戦果収入16
捕虜交換 160
戦闘報酬247
合計現金収入256
獲得レートポイント256
【!】摘発 あなたのダンジョンは摘発されました……
収入 3100moneyがかき集められました
【!】経費 7522moneyを消費しました
【!】破産 装備ユニットが売却されます……
◆あなたのアラームの罠 は破壊されてしまった……
◆あなたの水牢の罠 は破壊されてしまった……
◆あなたの水路 は破壊されてしまった……
◆経験値が15増加しました……
◆『回転する火の目の勇者』 は コールドウェイブ を習得したようだ……
キャラデータ
名前
雇われ指揮者『三原辰乃』
愛称
『指揮者』
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あなたは摘発されています。違法性の少ないユニットを選んで装備し、キュアの魔法を発動させなければなりません キュアを発動させるには、レガリアに天光天摩か暁新世界を選択する必要があります プロフィール
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
三原辰乃 魔王に雇われた『指揮者(コンダクター)』 魔王の権能を一時的に貸与され、楽団を指揮する。 本来は男性らしい。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
あなたの作製した勇者 『回転する火の目の勇者』
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
__0__1__2__3__4__5 __6__7__8__9_10_11 _12_13_14_15_16_17 _18_19_20_21_22_23 |
お城データ |
|
|
ID | 種別 | 名前 | 詳細 |
---|---|---|---|
1 | --- | --- | --- |
2 | --- | --- | --- |
3 | --- | --- | --- |
4 | 電撃護衛:クラウド | あなたのクラウド [20]《装備:4》 | ▼詳細 |
5 | 冷気罠:水牢の罠 | あなたの水牢の罠 [20]《装備:5》 | ▼詳細 |
6 | 電撃建築:尖塔 | あなたの尖塔 [20]《装備:6》 | ▼詳細 |
7 | 電撃罠:アラームの罠 | あなたのアラームの罠 [20]《装備:7》 | ▼詳細 |
8 | 冷気護衛:ビースト | あなたのビースト [20]《装備:8》 | ▼詳細 |
9 | 冷気建築:水路 | あなたの水路 [20]《装備:9》 | ▼詳細 |
10 | 電撃護衛:クラウド | あなたのクラウド [20]《装備:10》 | ▼詳細 |
11 | 電撃建築:尖塔 | あなたの尖塔 [20]《装備:11》 | ▼詳細 |
12 | 冷気護衛:ビースト | あなたのビースト [20]《装備:12》 | ▼詳細 |
13 | カルマ冷気建築:水路 | 冷たいアルペジオ [20] | ▼詳細 |
14 | --- | --- | --- |
15 | --- | --- | --- |
16 | --- | --- | --- |
17 | --- | --- | --- |
18 | --- | --- | --- |
19 | --- | --- | --- |
20 | --- | --- | --- |
21 | --- | --- | --- |
22 | --- | --- | --- |
23 | --- | --- | --- |
24 | --- | --- | --- |
25 | --- | --- | --- |
26 | --- | --- | --- |
27 | --- | --- | --- |
28 | --- | --- | --- |
29 | --- | --- | --- |
30 | --- | --- | --- |
次回の報酬ボーナス
売上均衡補正 | 9% |
---|---|
戦闘報酬均衡補正 | 4.7% |
明日の戦場
作戦開始……4時00分 第5ブロック 「ギステル闘滅領域」
巨大なコロッセオ。その下は、巨大な迷宮と猛獣の巣
ID-1 麓噛拿音香 |
ID-2 シャーロット |
ID-3 雇われ指揮者『三原辰乃』 |
ID-4 魂取り |
ID-5 トイトイ |
ID-6 ありふれた白紙の魔王 |
ID-7 SSR『経験値妖精』 |
ID-8 ストナ |
ID-9 桔梗の天蓋の魔王『ユメミヤ』 |
ID-10 時果ての魔王クン |
ID-11 氷霧の魔王 |
ID-12 焦がれる残火の魔王『フィリリ』 |
ID-13 閉塞する花の魔王『ネグロラルゴ』 |
ID-14 シバン |
ID-15 <悪魔の檻> |
ID-16 悪運の魔王SFORTUNA |
ID-17 闇 |
ID-18 ココ |
ID-19 アイオーナ&サッコ |
--- |
--- | --- | - vs - | --- | --- |
ID-52 ああああ |
ID-53 妄執の狂信者『リリエス・ベルリオーシュ』 |
ID-54 @@/23/クーア |
ID-55 流浪のカルマ電撃魔術型勇者 |
ID-56 ウルヤナ |
ID-57 姿見えぬ勇者『トラッハドール』の先導 |
ID-58 自らを聖者と豪語する者、ブレア |
ID-59 流浪のカルマ聖魔護衛型勇者 |
ID-60 流浪のカルマ聖魔治療型勇者 |
ID-61 あおじそ |
ID-62 流浪のカルマ物理護衛型勇者 |
ID-63 多脚の影 |
ID-64 流浪のカルマ冷気治療型勇者 |
ID-65 灼熱勇者『ミトリビア』 |
ID-66 流浪のカルマ火炎魔術型勇者 |
ID-67 流浪のカルマ電撃治療型勇者 |
ID-68 流浪の徳聖魔治療型勇者 |
ID-69 流浪のカルマ電撃魔術型勇者 |
妄執の狂信者『リリエス・ベルリオーシュ』 攻撃種別:徳聖魔治療 習得魔法: レベル : 勇者情報:人の命が軽い世界からやってきた、神官の女性。 被差別種族であり、尖った耳を隠すために常にフードを着用している。 人間相手に不殺主義を貫く『狂人』。 実際に言動はかなり危ういものがある。 人間としてはかなり酷いが、神学者としてはそこそこ優秀である。 冒険者としてもそこそこに経験を積んでいる。 人々は彼女を狂人と評する。いつしか、それは事実となっていた。 いつから彼女の歯車が狂い始めたのか、誰も知らなかった。 知ろうとする者もいなかった。 |