ENo.0194　鍵原ユキと天眼石蝶也

日誌 記録者：天眼石 蝶也

鍵原くんさあ、店長のこと店長って呼ぶのやめない？今はキミも店長だし、もっとマイルドに呼んでもいーんだよ。
チョーヤさんとか、チョーちゃんとかさあ。あ、アマちゃんとにいにはやだなあ。店長も鍵原くんのことユキちんとか呼ぶからさあ。
店長って一人称もやめよう。ぼくで行こう。ぼく、うん、懐かしい懐かしい。
ほら、名前で呼ばれるとさあ、落ち着くじゃん？昔を思い出して……チョーヤってぼくの最初のご主人がつけてくれだんだよ。
ぼくがまだひらひら飛ぶ蝶々が珍しかったころ、追いかけて遊んでてさあ、それ見たご主人がチョーヤ、チョーヤって……。
あのころのぼくはまだひよっこ、もちろんネコマタにもなってなくて。最初の頃はその響きの列がなんだかわかんなかったんだよ？
でも、ご主人が事あるごとにその文字列を言うから、ああこれはぼくのことを指してるんだなあと。我ながら今思い出しても賢いよ。

……横で何言ってんだこいつみたいな目するのやめてね、微妙に傷つくんだよねそれ。
もー、どうせ後で聴けるんだからぼくの生日誌聞いてないでなんか良さげな商品選んできて。店長命令だよ。
あれ、今は同格だっけ。まあいいや、ぼくのが経歴状上だし？ほら、行った行った。


さて、はて。真面目にやりましょうか。
おかしなところに飛ばされて早三週間。赤字も出てないし、今のところ問題は無し。
なんだか遠くの魔王さんが禁忌指定されちゃったとか不穏な話が流れてきたけど、直ちに影響はなし。様子見。
あとは……あー、ダメだ、こういうのダメだ！ぼくとしてはもうちょっとかる～くいきたいよね。
とりあえず手探りでワサワサしましょう。ワサワサ。

ところでユキちん、いなくなったご親戚さんのことまーだ諦めてないんだねえ。
いいとか悪いとかじゃあなくて、熱心だなあというか、なんというか。
多分ここじゃ見つからないと思うよお。多分ね、多分。ヨーカイの直感っていうか？別に、探したいなら止めないけどねえ。
あと褒めてくれてありがとう。もっと褒めてもいいよ。鏡の件は……割っちゃったのはぼくの過失だから。なんとでも思えばいいさ。

まあ、さ。がんばっていこうよ、二人で。ちょっとぼくの店のことが気になるけど、まあ他の子たちも優秀だしね。なんとかやっていってくれているでしょう。
……いや、冷静に考えて店長がバイトの子と失踪ってヤバいよねえ。事件かもしくは駆け落ちかって感じ。
ぼく、ユキちんと駆け落ちするようなふか～い想いはないけどねえ。性別云々じゃなくて、単純にタイプではないというか。
ぼくのタイプはもうちょっとかわいくて、白くて、ふわふわで……ああ、変なこと思い出しそうになる。やめやめ。

ところで、今回『も』って何？気になるなあ。ま、いいけどね。経験豊富なのはいーことだ。
ぼく2割働くから8割働いてほしいなあ。ダメ？