ENo.0205　ラシュコート

　なんだかよくわからないまま始まり、終わりました。

　それだけを記すのに精いっぱいになりそうでしたが、自分の現状について改めて整理したいと、こちらの帳面をまた開きます。


　私の名前はラシュコート。姓はありません。つまり、出自は謎に包まれています。気にしたことがないといったら偽りになりますが、あんまり気に病んだことはありませんでした。
　自分の寄る辺のなさに安心を抱いていたくらいです。
　ただ、気楽さに浮かれつつも、いざというときに頼れるものがないと不安にもなるのも、人の心の動きというものです。
　私は将来設計なるものにたいへんな恐怖を持っていました。
　特に大成はしなくても良いのです。清潔な住まい、また一匹の猫を飼って、その日その日を困らず暮らせたら、とても良いと考えております。素晴らしきかな。

　そのために、商売というものを始めてみようと一冊の本に啓発されてこちらに来たのですが。

　やっぱりよくわかりません。手製の商品を撫でつつ、明日からどうしましょう。そんなため息ばかりが漏れてしまいます。

　とはいい、そんな風に落ち込んでいても何も始まらない。
　私はそう自分を励ましつつ、商売のなんたるかを調べに行こうと思います。

　それでは。