ENo.0067　アルマ・レヴィルノ

「んー、どうしたものっスかねぇ」

帳簿とにらめっこしつつ呟く。
この世界に来てから雇った従業員も頑張っていた、赤字にもならなかった、しかし。

「上を見過ぎてもキリがないッス。とはいえ、やるからにはもう少し稼ぎが欲しいッス、うーん…」

主人と異世界へ出向き依頼をこなしていたあの時とは状況が何もかも違い、ましてや自らの店を持って経営を行った経験などない彼女には如何ともしがたい状況であった。

「アルス殿から貰ったメモ、見てみるしかないッス…？」

出発前に大きな商会をまとめている地の魔導士から譲ってもらったメモの束。
彼が商会の主になるまでにまとめた商いの心得が綴られているものであり、困った時にだけ読むようにと言われていたものである。

「…。いや、まだッス。まだわちしの店は始まったばかり、これを読むには早い気がするッス。今のわちしにできる事、もっともっと考えるッスよ…」

メモを開こうとして思い止まる。これはあくまで修行の一環、すぐに楽をしてはいけないと自らを戒め、どうするべきか再び思考に没頭する。

「教えを請うた時にまず言われた事、思い出すッス。確か…」

改めて師の言葉を思い出し、次の商戦に備えるアルマであった。

とある悪魔がひそかに準備していた城の客室
そこはいつでもお茶会が開けそうなほどのお菓子や飲み物が用意されているのであった