ENo.0164　ラリル・レ・ロッタ

ああ、目覚めてしまった。
どうやら狭いらしい空間で目覚めた際の最初の感情だ。

おそらく、だるさとか、寝起きの感覚とか、体感的な勘に近い予測だが、だいたい500年。そのぐらい寝てた気がする。
短い。あまりにも短い。
勇者に負けて眠らされたんだからもう少し休憩させてくれても良いのではないだろうか。せめてもう一回、500年ぐらい寝かせてほしい。

見慣れない景色なのは、全く違う場所で起こされたからか、それとも寝てる間に世界が様変わりしたからか。

（500年の間も繁栄してるんだ……）
そんな感想を抱いていると、人影に気付く。

――勇者さん？

勇者ならまた寝かしつけ……もとい、封印しに来たとかそんな感じだろう。
その為に斬られたり燃やされたり、そういった痛いことは嫌なので形だけでも抵抗の姿勢を取ろうとした、が。

「君も魔王を始めたんだね！」

問う声。敵意とかそういうものは無いらしい。
少々気が抜けたが、その通り。正確に言えば再開だが、些細な問題だろう。
そのへん考えるのも説明するのもだるい。

「うん、……まあ、そう」
そのまま、話に耳を傾ける。
なんとなく分かった自分の現在の状況はこうだ。

どうやら元の世界とは別の世界に呼ばれた、あるいは飛ばされたこと。
この世界では戦いや一方的な征服は禁止。なんでもお金で解決しなければいけないこと。
自分たち魔王は城で店を構え、勇者たちに買い物をさせ、破さ……満足させて帰すのが望ましいこと。

それと、13週で世界が滅ぶこと、30週でなんかの試験があるらしいこと。

（13週で滅んじゃったら試験もなにもなくない？）

まさか乗り越えろとでも言うのか。
それが事実であれば、自分はとてもめんどくさい場所に連れてこられたらしい。
世界の決まりを守り、経済の循環をなんとやら、みたいな知識はあれども、自分が何よりめんどくさい分野だ。

「でもここで世界もろとも滅んで元の世界に帰れなくなるのは嫌でしょ？ね？そうでしょ？」

でもまあ、来てしまったものは仕方がない。
とりあえず何か作れるらしいので兵士とお供ぐらい作れば勝手にやってくれないかなあ、などと考えてみる。
「………………。」
「グルガゴゴガゴギェ」
マニュアルを読みつつ、なんとなくできた。
弓兵と…………なんだろうこれ。何この唸り声？

「いぬ？」
「ブォアアァゴ……」
「魔王様、どう見ても犬ではないかと……」
「でも返事したからいぬ」

左様でございますか、と弓兵は納得した。
いぬを育てるにあたって、餌はどうするだろう。ほっといてもどこかで食べるような気が――。

「魔王様、貢ぎ物でございます！」
「何？」

弓兵は声を高らかに答える。
「猫缶です！！」
「そっか。」

弓兵から猫缶を受けとる。
ひんやりしている。少なくとも中身が腐ってるとかもなさそうだ。

「ねえ、いぬ」
「ギャァン？」
「これたべる？」

いぬはそっぽを向いた。