ENo.0137　織村東三木臺ミミミ

　ダンジョン深く、四畳半のゴザと子供がその日の終わりには飽きて捨ててしまいそうな道端の石や枝を一纏めにして運ぶ少女が1人。
　栗毛色の跳ねた髪に新緑のような瞳、さらにその少女の普通の人間との差異を挙げるなら、腕から先が翼になっており、腰から下は走鳥類のものであることだろうか。
　少女はあまりにも明るい表情でダンジョンを突き進んでいく。

「ミミミはこれから魔王になってお店屋さんするんだよって！　来てねって来てねって！」

　通りすがる人達と片っ端から挨拶を交わしながら、これから自らの城を据える場所を探していく。
　進む道は広く、先は長い。それはまるで彼女のこれからの道のりを現しているかのように。

「ん？」

　目的地の決まらない道中、少女は何かに気付いたかのように素っ頓狂な声をあげた。

「ところでお店屋さんって、何をすればいいんだろうって？」

　陽気一つにただ何も考えずに進んでいた少女。
　少女は実際何をするべきかも考えていなかった！

「えーっとえーっと、あのあのって……」

　いざ誰かにその答えを問おうとした時に限って誰も周りにはいなかった。

　どうしようもなくなった少女はその場にぺたんと座る。
　地面は冷たく、居心地の悪さを感じた少女は御座を引き座り直す。
　そうしたのならせっかくだからと、一緒に持ってきたゴミとも言える石や枝も並べてみる。
　そして少女の城は30秒で完成した。

「あのー、あのーって！　ミミミのお店屋さんだよって！　みんな来てって！」

　少女は必死に声を張ってみるが、その声に反応するものはなし。

「ミミミだよーって……」

　声は次第に小さくなっていき、仕舞にはか細く消えた。

　幸先悪くただ佇むだけの少女の名はミミミ。
　俗称三木ミミミの正式名称織村東三木臺ミミミ。役所の届はドントル街ハシ森街道先織村東三木臺ミミミ。
　どこからでも帰ってこれるようにと、住所がそのまんま名前な栗毛のハーピィ。
　彼女は世界の危機に立ち上がった魔王の1人であり。

「じゃあ、この場所はもういいやって。次行こう次行こうって！」

　立ち直りも早い、バカで陽気なまごうことなきこの世界の住人であった。






「ミミミのお店屋さんは、ほんじつ開店だよって！」

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