ENo.0096　リィ・シージング

……それは、ある昼下がりの事。

「はぁ……まいったなぁぼく1人でどうにかできる事じゃないし…。」
ぶつぶつと独り言を言いながら歩く魔物の姿があった。
「うう、みんなしてヤケになっちゃうから魔王だっていなくなってぼくはフリーの職ナシだし…」
「……ー！…………てー！」
「ああ、ついに幻聴まで聞こえてきた、もうだめかもしれない。」
「避けてー！！」
「えっ。」

魔物が立ち止まった瞬間、目の前にローブ姿の人間が落っこちてきた。

「……えっと。人？」
「いったたた……歪みがあるなんて聞いてないよ…。あ、ん？」

眼が合う。

「め、恵みだ。」
「へ？」
「天はぼくを見捨ててなーい！！」
「ちょ、ちょっと、どういうことかな！？」


どうみても魔術師な魔王、はじめました
　～其1 それはいつもの巻き込まれ

「……つまり十数週間後にこの世界で満足させられないと滅んでしまうと。」
「はい。」
「で、私に魔王をしてもらって満足させてほしいと、競合相手が居る状況で。」
「はい。」
「一つ聞くよ。正気だね？」
「正気。」
「見ず知らずの突然降ってきたヤツを信じるってことだけど正気だね？」
「正気だ。」
「……しょうがない、わかったよ。すぐに何処かへ行けるわけでもない。その事に乗ろうじゃないかな。
色々と当てはあるんだよね？店舗とか…。」
「あんまり広くないけど…一応」
「……数はおけない、かな。しかしこれくらいなら…そうだね、在庫とかの置き場所は私の術でなんとかしようかな。
よし、行くよ、集まりがあるんだよね？」
「どっと押し寄せる集まりがあるのは確か…ここです。」
「久々に…行ってみようかな、紙とペンの戦場にね。」


「あ、ところで姉妹提携してくれそうなところに声かけておきました。」
「え、挨拶もしてないのに？それもしてこなきゃだね…！」

リィの魔術式による倉庫の一角。この世界においては制限がかかっていて入れられる数は限られているが彼女はそれを切り詰めてでも団欒スペースを確保している。
休息はなにより大事かな。とは本人の談。
難しい書物も転がっている…。
※知識極ユニオン