ENo.0255　アスロェ

　店の売り上げは芳しくなかった。
いや、以前の僕に比べれば比べようもないくらいに売り上げは改善されているのだが。
借金も増えず、ただ利益を増やせている。
ただ……。
他の魔王、ランキングに乗るような魔王はもっともっと稼いでいる。
僕は上を目指したいのだ。
何故上を目指したいのか…それは自分でも良く分からない。
感情を失う前の僕は確か、その理由を覚えていた筈なのだが。

　稼げなかった点を反省し、ランキングに乗るような魔王の店を調査もした。
結論として言うならば、あのモブおじさんとかいう存在が非常に邪魔くさいものだと思えた。
勇者よりも、あのモブおじさんとかいう者達は裕福だ。
よって、勇者よりもモブおじさん達にターゲットを絞った方が良いのだ。
例え売り上げは変わらずとも、魔王宣言をする暇を与えられるしね。
だが、勇者にモノを売り過ぎるとモブおじさん達には商売できないという不可侵の規約がある。
僕たち魔王とは一体何なのだろうか。

　ともあれ、改善すべき点は判ったので改善に動こう。
巨人の護衛を雇いつつ、僕は植物を植えることにした。
考えて見れば僕の店には緑が無かった。
これでは来店したお客を（仮宿の魔王に見せて貰った本に書かれていた）『フィトンチッド』なるパワーで癒すことも出来ない。

　植物を植えたが、僕はこの植物が何の植物かも知らなかった。
名も無い植物を植えているよりは、嘘でもネームプレートにそれらしい名前を書いておいた方が良いだろう。
『トコロッテ』とネームプレートに書き込み植物に吊るした。
先日散策した先で出会った植物のような何かの子の名前を模したものだ。