ENo.0196　毛皮の無い白狼の魔王

ごとりと重い音を立ててテーブルに置かれたプレートに、カロスは分かりやすく眉根を寄せた。
カラは自身に向けられた渋面をまるで気にした風も無く、ゆったりとした所作で向かいに腰掛け足を組んだ。

「あのさ、わかっててやってるよね？」
「ええ勿論。貴方の働きが悪くて実入りが薄いってことは、誰からも説明される必要は無いわ。」
「いやだからこのスジだらけの肉は」
「だから、よ。」

長い白髪を軽くかき上げ、口角を軽く上げながら身を乗り出してカロスの顔を覗き込んだ。

「働きに見合った食事よ。のんびり噛み締めなさい。
　今日は私が店を見るわ。」
「今までもそうだったじゃない？それに、これ噛み切れないよ」
「貴方は引っ込んでなさい、ってこと。しゃしゃられて、金の払いがいい者を逃すのも癪だから。」
「じゃなくて、ほら、僕ナイフもてないから」
「牙を研いでなさい。じゃ、後はよろしく。」