ENo.0096　リィ・シージング

～其３ 昔々の事だけどね。
「ところで…親兄弟はいなかったんですか？」
「ん？あー…そうだね……いたよ。うん。」
そう答える顔はどこか寂しげで、辛そうで。
「えっあっ…な、なんかすみません…。」
「いや、いいんだよ。そうだね…ちょっと話をしようかな。」

「私は昔、物心ついたときには親がいなくってお兄ちゃんと一緒に暮らしていたんだよ。
平和で楽しくて……お兄ちゃんも頼りになる人だった、でもね。
割りと大きな抗争があってね…その時に首謀者の生み出した魔物を封印するために…消えちゃったんだよ。それから私はひとりぼっち。」
「寂しくなかったんですか？」
「そりゃ…寂しかったよ。でも親友もいた……うん。操られちゃって、結局、殺しちゃったんだけどね。」
「……。」
「悪いことしたなって思うよ、再会できたけど、なんていえばいいかわからなかったしね。
それからは…新しい親友ができて、隊長にまでなって……狂いかけたりもしたけどアレはまた違う話かな。」
「１人で納得しないでくださいよ。」
「ごめんごめん、また今度話すから。沢山出会って来ているからね、一つ一つ考えなくちゃいけないから…。ほら、無駄話もここまでにしておくよ。お客様のご来店だよ。」
「おわ、ほんとよく来るようになりましたね…」
「それだけ…みんないっぱいいっぱいなんだよ思うよ。さあいらっしゃいませ！」

リィの魔術式による倉庫の一角。この世界においては制限がかかっていて入れられる数は限られているが彼女はそれを切り詰めてでも団欒スペースを確保している。
休息はなにより大事かな。とは本人の談。
難しい書物も転がっている…。
※知識極ユニオン