ENo.0116　茶処うーろん

いつからだったのかはわからないけど。
はじめはほぼ『いるだけ』だったうーろんたちが、気が付いたら他の『姫』たちと肩を並べるようにして戦い始めてる。

おかしい、と思ったけど。
此処での『魔王係』は、一頭の烏龍竜。
その駒として働くべきユニットは、この城から作られたものはひとつたりとて存在しない。
そのすべてを、一頭一頭の烏龍竜たちが負っている。

疑問に思ったまま、戦線に加わるようになった、『頼れる』うーろんを小突いてみる。
ころり、と笑い声をあげて転がって、次をねだるように爪先に抱き付いてきた。
少し思い切り、尾を当てがう。
ずしん、と軽い手ごたえと心に重い圧を感じる。
‥しかし随分な距離を飛ばされて尚も。
烏龍竜はけろりとしている。前評判通り、それを喜んでさえいるみたい。
‥となれば、やっぱり。

「勇者が相手のときは完全に『ユニット』なのねェ‥」

勇者を退けるに足るほどの強力な一撃が、このちいさな手から出てくるだろうか。
逆に、おいらの攻撃よりも遥かに薄っぺらい勇者の攻撃いくつかで、この竜が動けなくなるだろうか。
『入った郷に乗っかる力』。
あの花もつまりは、その延長線上だったのかもしれない。

‥考え事をしながらじゃらしつづけていたが、そろそろ疲れてきた。
勇者にしても、お客様にしてもそろそろ最後の来る頃合いだ。
戦闘中は『ユニット』として頑張って貰わなくてはいけないが、本業は本業で、『看板竜』として頑張って貰わなくてはいけない。

「最後までよろしくねぇ？」
「はい！！」

　『給仕＆魔王役』は　はりきって‥皿を割ってる！！

　『調理＆内装＆城役』は　さいごのりょうり　つくってる！

　『会計＆雑務役』は　さめた目のあいだに溜めた〆切たちに　おわれてる！