ENo.0025　うつろな焼痕の魔王『　　　　』

「ままならないな。っ、ごほっ。」

壮年の男を思わせる声音は、無惨に焼け果てて。
苦し気な吐息とともに、聞く者があればいかにも憐れに聞こえただろう。

「……」

フードの下の暗がりで、男が自分の手を見下ろした気配がある。
赤黒く、いやなにおいを放っているそれ。

「このまま、か。」

さして感慨もなさそうにそう呟いて、男は背もたれに体を凭せ掛ける。
しかしぼろぼろの体は、そんな動きにさえもひどい痛みを訴えるようで。
男は、声にならない声で小さく呻いた。

「っ、……。屋敷の様子は、随分変わって…いるようだ。」

男は声を出すのをやめない。
まるで、そうしてしまえば二度と声が出せなくなるのだと恐れているように。
苦しみながらも、呟き続ける。

「なにより、…屋敷の中で起こって、いることが、手に取るようにわかる……。
　おもしろ、い。新しい感覚だ。」

しかし──と男は続ける。

「屋敷に、竜が……っいるとは…。は、ははっ。けほっ。
　それも、どうやら……ぼくらの知る竜──邪竜、ではないらしい。
　学者どもが、見たら、腰を…ぅっ、抜かすだろうな。

　──何頭もいた。繁殖、……できるだろうか。」

く、と皮肉な笑みがこぼれる。

「つくづく──」

まだ燻っている。