ENo.0080　闇

【業務報告】
[所感]
　……多少は、安定し始めたのか否か……
　いや……陥落している以上、安定というには難があるが……
　兎角、売り上げだけを見れば、そこそこである……
　このまま、どうにかなるのや否や……
　……情勢。
　世の、定義。
　理と共に在る……此の身は、如何様な事態と、成るのであろうか……

[収支報告]
　予定支出:616
　取引収入:0

[在庫確認]
　特になし。

[設備投資]
　尖塔3基を新しい3基へと改装。

[雇用状態]
　ハーピィ1名新旧交代。

[備考]
　特になし。

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　折角に……良い茶と、良い茶菓子の手筈を、整えたのだ……
　……願わくば……
　此の、身動ぎの一つも侭成らぬ、不甲斐無い置物が。
　一万の階層に呑まれ、滅え逝かぬことを。
　……或いは、せめて。
　斯様な事態と成ったとて……
　我が愛しき妃らだけは……変革の渦の外に、在って呉れる事を……
　――仮初の楔に繋がれた此の魔王は、唯、望むばかりである……

[輝のこと]
　額面としては控えめながら、やはり片手間と考えるに、十二分に過ぎる成果である……
　……貢物に妙なものを納品されていたようではあるが。
　妻より手製の宝飾は、未だ、装着位置に悩む始末……やはり、何処か己が眼に留まる、所にと思いはするものの……
　斯様、身動ぎが成らぬでは、鏡の前に立つといった動作が叶うではなく……さりとて、来客少ないなりに、外賓の眼にも留まり易ければ尚良しと、斯様な欲も出る所であり……
　諸々、逡巡が過るばかりで……着衣の何処にしたものやら、一向に決まらぬ……
　……それはそれとて、来る区切りの15週……また、何処かへ出掛ける算段なのや否や……
　俄、過るものに、一抹の寂しさが湧く所である……
　否、或いは、その方が――

[とんぼちゃんのこと]
　見事な収益である……
　……何故か此方にも、妙な貢物がされているようであるが……
　表向き……戦果と、日々の記録を見遣る限りにおいては、心の曇りも晴れて見えるが……
　先に見せた曖昧なまなこの青には、幾ばかりか、憂いを覚える。
　……せめても、差し伸べた此の手が、ひととき眠る妻の胸中を和らげる事ができたならば、と。
　真偽知れぬまま、ただ、都合の良き願望が過るばかり……
　……嗚呼、だが、何よりも、其れよりも。
　むしろ……俺と共に在った事で、あの愛しき瞳に、いまいちど、退紅(あらぞめ)を差しては仕舞わないだろうか。
　今は……其れだけが、気掛かりである――

[花咲之前のこと]
　……矢張り、余力十分であったようだ……
　試行錯誤から一転……見事な戦績である……
　……流石に、此方は妙な貢物ではなかったようだ……いや、当然ではあるが……
　嗚呼、しかし……斯様、気侭に振舞う事に長けて来た者が、如何とも素直に、胸中の揺らぎに伴い振舞う様というのは、かくも可愛らしきことであろうか……
　一週を経て尚、未だ過るあの愛い言動に、無意識、襟の陰にて口角の吊れる日々……
　……だが、一方に……区切りの週を経て後は……恐らくは、また、教え子と共、学びの場を変えるのであろう。
　暫し……斯様な姿を望めぬことが、一抹、寂しくもあり。
　……ただ、見知らぬ何処かで、あの愛い面持ちを曇らせては仕舞わぬか、微か過るのである――

[パイロちゃんのこと]
　先週に比べれば……とはいえ、今週も、随分と控えめな収支のようである……
　余り、身を入れていないように見える辺り……出立の準備でも、しているのであろうか。
　……兎にも角にも……予想だにせぬ事とはいえ、結果的、指輪との引き換えに妻を構成する身の一部を、我が手元に預かる事となったのは、僥倖な心地である……
　……かの身はまた、その成り立ちに沿い……15の週が明けた後は、行く先を定め、旅立つのやも知れぬ……
　斯様であるからこそ、其れは然る理であり……あの紅きまなこが見定め、燃ゆる翼にて行き交った見聞を、やがて告げて呉れる事は、俺自身が望んだに相違ないものである……
　さりとて、其れが……妻の集める知見と『家族』を、俺が知るに、叶うことを――