ENo.0013　デッドレス

そこには本があった

「然して、辿り着くのは……ということか」

火の燻る音が、焦げ臭さが、デッドレスを取り囲む。今までのコレクションが、燃えているらしい。「商戦も激しさを増したな」だとか、「流石にもう少し火の対策をすべきだったか」だとか。そんなのどうでもよいと言いたげな目で、真っ赤な景色を真顔で一瞥するデッドレス。実際どうでもよかった。

ここに、目的の本があればいい。
　
「今此処に宣言す。私こそは『sho』を司るモノなり。全ての始まりを引き継ぎて、夏を司る読み手とならん！」


[押し売りも、"私の"長い旅も今日で終わりだ]


空気との境界が曖昧になって行く。不死者として彷徨った名も無いデッドレスは今、概念として昇華されようとしていた。司るは『夏』と『sho』。


[次は……いつか君が私の読む物語と出会うまで]


いつか、その本が『秋』と『ten』を越えて、『冬』と『ketsu』に辿り着くまで。
デッドレス――教典[β]は、次元の向こう側にいる貴方の方を見て。

[君も物好きだな、こんな極地にある日誌を読むとは]


[……悪い気はしない]


一度だけ。
最初で最後、たった一度だけ、微笑んだ。